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公開番号2025069635
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-05-01
出願番号2023179463
出願日2023-10-18
発明の名称衝撃吸収部材及び車体部品
出願人日本製鉄株式会社
代理人個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人
主分類B62D 21/15 20060101AFI20250423BHJP(鉄道以外の路面車両)
要約【課題】軽量でありながら節目良く折れ変形して高いエネルギー吸収効率を発揮できる衝撃吸収部材の提供を課題とする。
【解決手段】この衝撃吸収部材1は、筒状体30とリインフォース40とを備える。リインフォース40は、縦板41を有してかつ第1平面部幅板厚比r1が10以上50以下である第1条件、及び、横板42を有してかつ第2平面部幅板厚比r2が10以上50以下である第2条件、のうちの少なくとも一方を満たす。筒状体30は、長手方向に沿って順に並ぶ第1部位R1、第2部位R2、第3部位R3を有し、第2部位R2に、折れ起点部として第1ビードBa及び第2ビードBbを有する。
【選択図】図2
特許請求の範囲【請求項1】
中空管と、前記中空管の内部に固定配置されたリインフォースとを備え、一方向に沿って長い衝撃吸収部材において、
前記中空管が、引張強度が650MPa以上1600MPa以下の鋼材からなり、前記リインフォースが、引張強度が590MPa以上1600MPa以下の鋼材からなり;
前記衝撃吸収部材の長手方向に垂直な断面で、
前記中空管が、平坦部全幅寸法W1(mm)及び板厚t1(mm)を有する天壁部と、前記天壁部の両側に設けられて平坦部全幅寸法W2(mm)及び板厚t1(mm)を有する一対の側壁部と、を有し、
前記リインフォースが、前記天壁部に一端が接合され合計枚数がn1枚でかつ合計板厚がt2(mm)である縦板と、前記一対の側壁部間を接続して合計枚数がn2枚でかつ合計板厚がt3(mm)である横板と、のうちの少なくとも一方を有し、
前記リインフォースが、前記縦板を有してかつ下記の式1による第1平面部幅板厚比r1が10以上50以下である第1条件、及び、前記横板を有してかつ下記の式2による第2平面部幅板厚比r2が10以上50以下である第2条件、のうちの少なくとも一方を満たし;
前記中空管が、
前記長手方向に沿って順に並ぶ第1部位、第2部位、第3部位を有し、
前記第2部位に、折れ起点部を有する;
ことを特徴とする衝撃吸収部材。
r1=((W1-t2)/(n1+1))/t1・・・(式1)
r2=((W2-t3)/(n2+1))/t1・・・(式2)
続きを表示(約 1,500 文字)【請求項2】
前記中空管が、前記天壁部と前記一対の側壁部との間を繋ぐ一対の稜線部を備え;
前記折れ起点部が、
前記一対の稜線部の一方及び前記天壁部間の境を横断する第1ビードと、
前記一対の稜線部の他方及び前記天壁部間の境を横断する第2ビードと、
を有する;
ことを特徴とする請求項1に記載の衝撃吸収部材。
【請求項3】
前記第1ビードが、前記一対の稜線部の一方及び前記一対の側壁部の一方間における境を横断し;
前記第2ビードが、前記一対の稜線部の他方及び前記一対の側壁部の他方間における境を横断する;
ことを特徴とする請求項2に記載の衝撃吸収部材。
【請求項4】
前記折れ起点部が、前記天壁部と前記一対の側壁部とのうちの少なくとも一方に形成された、貫通孔あるいは前記長手方向に交差する方向に長い第3ビードを有する
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の衝撃吸収部材。
【請求項5】
前記第2部位の材料引張強度を前記第1部位及び前記第3部位の平均材料引張強度で除算した材料引張強度比を、0.5~0.9とすることにより、前記第2部位に前記折れ起点部が設けられている;
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の衝撃吸収部材。
【請求項6】
前記第2部位の板厚を前記第1部位及び前記第3部位の平均板厚で除算した板厚比を、0.5~0.9とすることにより、前記第2部位に前記折れ起点部が設けられている;
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の衝撃吸収部材。
【請求項7】
前記第1部位及び前記第3部位のそれぞれに、前記長手方向に沿った補強部が設けられている
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の衝撃吸収部材。
【請求項8】
前記各補強部が、前記長手方向に沿って形成された、ビード、アングル材、エンボス、のうちの少なくとも一つを有する
ことを特徴とする請求項7に記載の衝撃吸収部材。
【請求項9】
前記中空管が、
前記天壁部及び前記一対の側壁部を有するハット形部材と、
前記ハット形部材に接合されて前記天壁部に対向する板状部材と、を有し;
前記第1条件及び前記第2条件の双方を満たし;
前記長手方向に垂直な断面で、
前記n1が1でかつ前記n2が1であり、
前記縦板が、前記天壁部と前記板状部材との間に掛け渡された状態で固定され、
前記横板が、前記縦板に対して交差した状態で前記一対の側壁部間に固定されている;
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の衝撃吸収部材。
【請求項10】
前記中空管が、
前記天壁部及び前記一対の側壁部を有するハット形部材と、
前記ハット形部材に接合されて前記天壁部に対向する板状部材と、を有し;
前記第1条件及び前記第2条件の双方を満たし;
前記長手方向に垂直な断面で、
前記n1が1でかつ前記n2が1であり、
前記横板の一端が前記一対の側壁部の一方に接合され、前記横板の他端が前記一対の側壁部の他方に接合され、
前記縦板の前記一端が前記天壁部に接合され、前記縦板の他端が前記横板の前記一端及び前記他端間の位置に接合されている;
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の衝撃吸収部材。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃吸収部材及び車体部品に関する。
続きを表示(約 4,000 文字)【背景技術】
【0002】
近年、世界中で燃費規制が厳格化され、自動車メーカーは車体の軽量化を推し進めている。同時に、車体の衝突安全性も厳格化されているため、軽量化と衝突性能向上の両立が求められている。
また、各国の燃費規制対応やカーボンニュートラルの潮流に伴って、自動車の動力源の電動化が進められている。動力源の電動化に伴い、従来の内燃機関を有する車体構造に比べて、車体重量の増加やエンジンルームの縮小など、車体構造にも変化が生じている。その一例として、車体前部のショートノーズ化が挙げられる。車体をショートノーズ化しながらも高い衝突安全性を維持するためには、短い変形ストロークで高いエネルギー吸収効率が得られる構造が必要になる。
【0003】
特に、フロントサイドメンバやリアサイドメンバのように、車両衝突時に積極的に塑性変形させて衝突エネルギーを吸収する部品では、エネルギー吸収性能を飛躍的に向上できる構造が求められている。また、このような部品は、衝突時に乗員へ加わる外力を最小限に抑える役割を持つことからも、急激な荷重変動を抑制しつつ、変形ストロークを短くできる変形態様を持つことが理想的である。
【0004】
部材の変形態様としては、蛇腹変形と蛇行変形とがある。
蛇腹変形は、部材を構成する各側面の全てにおいて面外変形が発生するものの、部材長手方向の中心線は殆ど曲がらない変形のことを言う。
一方、蛇行変形は、部材長手方向の複数箇所において折れ曲がりを生じるものであり、その際、部材を構成する各側面のうちの一面を主体として面外変形が発生し、なおかつ、部材長手方向の中心線も曲がる変形のことを言う。
上記2つの変形態様を比べた場合、理想的な方向から衝撃力が入力するのであれば、蛇腹変形は、蛇行変形よりも衝撃エネルギーの吸収量が大きいと言える。しかしながら、衝撃力の入力方向は一方向のみに定まらないので、例えば部材長手方向に対して斜めに衝撃力が加わった場合、蛇腹変形ではエネルギー吸収量が著しく低下する。これに対し、蛇行変形(折れ変形)は衝撃力の印加方向に対してある程度柔軟に対応出来るので、衝撃エネルギーを安定して吸収できる。折れ変形により衝撃エネルギーを吸収する構造の一例を、特許文献1,2に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2008-174121号公報
国際公開第2021/192188号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、後面衝突時の衝撃エネルギーを吸収する車体後部構造が開示されている。この車体後部構造は、リアフレームと、このリアフレームよりも下方に配置されるタンクロアフレームとが車体の左右に一対で配置された車体後部構造において、前記リアフレームが、前記タンクロアフレームと比較して、変位Sに対する荷重Fの比(F/S)が大きくなるような変位-荷重特性を有し、かつ前記タンクロアフレームは、最大曲げ強度に達した後に急激に荷重が低下しないように断面変形が抑制された構成を採用している。
【0007】
ここで、上述したように、衝撃吸収部材には、軽量化及び衝突性能向上に加えて、変形ストロークの短縮化も求められるようになっている。軽量化の一手段としてアルミなどの軽合金を素材として採用することも考えられるが、その材料強度の低さ故に、衝突性能向上及び変形ストロークの短縮化は望めない。そのため、高い引張強度を持つ高強度鋼板を採用した上で板厚を薄くすることが別案として考えられる。しかし、例えば特許文献1に開示のリアフレームで単純に板厚を薄くした場合、このリアフレームの何れの箇所においても面外変形が生じやすくなり、折れ起点の位置がはっきりしなくなる。衝撃エネルギー吸収の観点からは、どこで折れてもよいというわけではなく、設計通りの位置で節目良く折れてくれないと、設計通りのエネルギー吸収量が得られない。その場合、蛇腹変形に比して優位であるはずの、本来のエネルギー吸収量の高さが発揮できない。すなわち、単純に材料強度を高めて板厚を薄くするだけでは、折れ変形の利点を高位に発現できず、変形ストロークの短縮化も達成できない。
この点は、特許文献2についても同様である。特許文献2には、閉断面構造を持つ骨格部材と、この骨格部材内に配置された補強部材とを備えた構造体が開示されている。この構造体において、軽量化を目的として骨格部材の板厚を単純に薄くした場合、骨格部材の各部位において面外変形が生じやすくなり、やはり折れ起点の位置がはっきりしなくなる。従って、折れ変形の利点を高位に発現し、変形ストロークのさらなる短縮化を達成するために検討の余地がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、軽量でありながら節目良く折れ変形して高いエネルギー吸収効率を発揮できる衝撃吸収部材、及び、この衝撃吸収部材を有する車体部品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用している。
(1)本発明の一態様は、
中空管と、前記中空管の内部に固定配置されたリインフォースとを備え、一方向に沿って長い衝撃吸収部材において、
前記中空管が、引張強度が650MPa以上1600MPa以下の鋼材からなり、前記リインフォースが、引張強度が590MPa以上1600MPa以下の鋼材からなり;
前記衝撃吸収部材の長手方向に垂直な断面で、
前記中空管が、平坦部全幅寸法W1(mm)及び板厚t1(mm)を有する天壁部と、前記天壁部の両側に設けられて平坦部全幅寸法W2(mm)及び板厚t1(mm)を有する一対の側壁部と、を有し、
前記リインフォースが、前記天壁部に一端が接合され合計枚数がn1枚でかつ合計板厚がt2(mm)である縦板と、前記一対の側壁部間を接続して合計枚数がn2枚でかつ合計板厚がt3(mm)である横板と、のうちの少なくとも一方を有し、
前記リインフォースが、前記縦板を有してかつ下記の式1による第1平面部幅板厚比r1が10以上50以下である第1条件、及び、前記横板を有してかつ下記の式2による第2平面部幅板厚比r2が10以上50以下である第2条件、のうちの少なくとも一方を満たし;
前記中空管が、
前記長手方向に沿って順に並ぶ第1部位、第2部位、第3部位を有し、
前記第2部位に、折れ起点部を有する。
r1=((W1-t2)/(n1+1))/t1・・・(式1)
r2=((W2-t3)/(n2+1))/t1・・・(式2)
【0010】
上記(1)に記載の衝撃吸収部材によれば、中空管の天壁部に折れ起点部を設定する場合、折れ変形の始めにおける天壁部は、中空管の内方に向かって沈みこもうとする。
第1条件のみを満たす場合、この沈みこもうとする力に抵抗しながら縦板が天壁部を支え続ける。これにより、天壁部の沈みこみが抑制されると共に、天壁部の沈みこみに伴って生じようとする一対の側壁部間の開きも抑制される。このように、中空管がその内方よりリインフォースによって支持される。
または、第2条件のみを満たす場合、一対の側壁部間の間隔が横板により拘束されている。この拘束により、天壁部が一対の側壁部間を押し拡げるように沈みこめないため、間接的に天壁部を支持した状態となる。よって、この場合も、中空管がその内方よりリインフォースによって支持される。
あるいは、第1条件及び第2条件の両方を満たす場合、天壁部の沈みこみの抑制に加えて一対の側壁部間の開きも抑制される。そのため、両者の相乗効果により、中空管がその内方よりリインフォースによってさらに強固に支持される。
このように中空管はリインフォースによってその長手方向の各位置で補強されている。その上で、中空管は、第1平面部幅板厚比r1が10以上50以下である第1条件、及び、第2平面部幅板厚比r2が10以上50以下である第2条件、のうちの少なくとも一方を満たしている。これにより、軽量化を目的として中空管の板厚t1を薄くしても、天壁部あるいは側壁部が容易に面外変形しなくなる。もし、意図しない位置で面外変形が生じた場合、その部位における圧縮変形の仕方が不安定になるため、面外変形した部位が折れ易くもなり得るし、折れ難くもなり得る。その結果、中空管の意図しない位置で折れ変形が生じる虞がある。一方、本態様では、第1条件及び第2条件のうちの少なくとも一方を満たしている。これにより、中空管が意図しない部位で面外変形することを抑制できるため、板厚t1を薄くして衝撃吸収部材を軽量化できる。
その一方で、この衝撃吸収部材は、第2部位に折れ起点部を有するので、第2部位の曲げ強度を、第1部位の曲げ強度及び第3部位の曲げ強度よりも相対的に低くしている。この相対的な強度差と、上述した第1条件及び第2条件の少なくとも一方との組み合わせにより、第2部位の折れ起点部において衝撃吸収部材を節目良く折れ変形させることができる。加えて、衝撃吸収部材に加わる衝撃エネルギーを、主にリインフォースが折れ変形しながら吸収するので、エネルギー吸収量を高めることができる。
(【0011】以降は省略されています)

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