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公開番号2025112312
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-07-31
出願番号2025064991,2021548452
出願日2025-04-10,2020-09-25
発明の名称システインの誘導体の製造方法、システインの酸性条件下での誘導体化剤、及びシステインの分析用試薬
出願人味の素株式会社
代理人弁理士法人酒井国際特許事務所
主分類C07C 315/00 20060101AFI20250724BHJP(有機化学)
要約【課題】スルファニル、セラニル、及びスルフィノからなる群より選択される1種以上の基を含む有機物質の誘導体の新規な製造方法を提供する。
【解決手段】スルファニル、セラニル、及びスルフィノからなる群より選択される1種以上の基を含む有機物質を、オレフィン化合物と酸性条件下で反応させて、前記有機物質の誘導体を得ることを含み、ここで、前記オレフィン化合物は、少なくとも2個の電子求引基(ただし、ハロゲン原子を除く。)を有するエチレン構造を含む、有機物質の誘導体の製造方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
スルファニル、セラニル、及びスルフィノからなる群より選択される1種以上の基を含む有機物質を、オレフィン化合物と酸性条件下で反応させて、前記有機物質の誘導体を得ることを含み、
ここで、前記オレフィン化合物は、少なくとも2個の電子求引基(ただし、ハロゲン原子を除く。)を有するエチレン構造を含む、有機物質の誘導体の製造方法。
続きを表示(約 1,500 文字)【請求項2】
前記エチレン構造が、2個の電子求引基を有する、請求項1に記載の誘導体の製造方法。
【請求項3】
2個の電子求引基が、前記エチレン構造を構成する同一の炭素原子に結合している、請求項1又は2に記載の誘導体の製造方法。
【請求項4】
少なくとも2個の電子求引基が、同一の基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の誘導体の製造方法。
【請求項5】
前記オレフィン化合物が、下記式(I)で表される化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の誘導体の製造方法。
TIFF
2025112312000031.tif
28
162
(但し、EWG

及びEWG

は、各々独立して、電子求引基を表し、これらが結合する炭素原子と一緒になって、環を形成していてもよい。)
【請求項6】
前記電子求引基、又はEWG

及びEWG

が、各々独立して、-C(=O)-OR

、-S(=O)

-R

、-P(=O)(-OR



、シアノ、ハロゲン原子で置換されたアルキル、カルボキシ、ニトロ、-S(=O)-R

、-C(=O)-R

、又は-C(=O)-NR



であり、
ここで、


、R

、R

、及びR

は、各々独立して、1価の炭化水素基又は1価の複素環基を表し、これらは置換基を有していてもよく、


、R

、及びR

は、各々独立して、水素原子、1価の炭化水素基、又は1価の複素環基を表し、これらは置換基を有していてもよい、請求項1~5のいずれか1項に記載の誘導体の製造方法。
【請求項7】
前記酸性条件が、pH6.0未満の条件である、請求項1~6のいずれか1項に記載の誘導体の製造方法。
【請求項8】
前記有機物質が、システイン、還元型グルタチオン、γ-グルタミルシステイン、システイニルグリシン、ホモシステイン、N-アセチルシステイン、過硫化システイン、ヒポタウリン、過硫化グルタチオン、及び、システイン残基を含むペプチド性化合物からなる群より選択される1種以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の誘導体の製造方法。
【請求項9】
前記有機物質が、更にアミノ基を含み、
前記有機物質を、前記オレフィン化合物と酸性条件下で反応させた後、更に中性又は塩基性条件下で反応させて前記有機物質の誘導体を得ることを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の誘導体の製造方法。
【請求項10】
(1)スルファニル、セラニル、及びスルフィノからなる群より選択される1種以上の基を含む有機物質を含む試料と、
少なくとも2個の電子求引基(ただし、ハロゲン原子を除く。)を有するエチレン構造を含むオレフィン化合物とを、
酸性条件下で混合して、前記有機物質の誘導体を含む処理試料を得ること、及び
(2)前記処理試料中の、前記有機物質の誘導体を分析すること、を含む、有機物質を含む試料の分析方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物質の誘導体の製造方法、及び有機物質を含む試料の分析方法に関する。
続きを表示(約 4,200 文字)【背景技術】
【0002】
生体内では、チオールは重要な役割を果たしている。例えば、生体内の酸化還元状態の維持、タンパク質の機能の制御、重金属などの生体異物の解毒などの役割を果たしている。
したがって、生体試料などの試料中のチオールを分析する試みが、従来から行われている。例えば、チオールを、電極表面での酸化還元反応を利用して、電気化学検出器により分析する技術がある(非特許文献1、2)。また、チオールを誘導体へ変換し、分析する試みも行われている(非特許文献3~8)。
チオールの反応としては、炭素-炭素二重結合との反応が知られている(非特許文献9、10)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
Anal.Biochem.,407(2010)151-159
Talanta,84(2011)789-801
Anal.Biochem.,27(1969)502-522
Biomed.Chromatogr.,20(2006)656-661
Chromatographia(1996)42:515
Journal of Chromatography A,Volume844,Issues1-2,4 June1999,Pages 361-369
Sci Rep,6(2016)21433
J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci,1083(2018)12-19
European Journal of Organic Chemistry,Volume722, Issue 1,14.May 1969,Pages 222-224
ARKIVOC 2009(viii)187-198
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1、2の分析方法では、チオールを誘導体化せずに分析するため、試料又は分析に使用する溶離液などの溶存酸素によりチオールが酸化されやすく、安定した分析結果が得られにくい。また、電気化学検出器はチオールに対する選択性が十分ではなく、アミノ酸、糖、その他複雑な夾雑成分を有するサンプルを測定する場合、夾雑成分により測定が妨害されることがある。さらに、電気化学検出器は、電極の洗浄等のメンテナンスが必要であり、また使用に伴い容易に検出感度が変動し、不安定となるため取り扱いが難しい。
【0005】
非特許文献3~6の技術では、チオールの誘導体化を中性条件~塩基性条件で行っている。
しかし、本発明者は、中性条件~塩基性条件では、チオールの酸化反応及びチオールとジスルフィド化合物との交換反応が容易に進行するために、チオールの分析が難しいことを見出した。したがって、中性条件~塩基性条件でチオールの誘導体化を行う非特許文献3~6の技術では、チオールの正確な分析が難しい場合がある。
【0006】
一方で、非特許文献7、8の技術では、酸性条件(pH3.5)でチオールを誘導体化しているが、反応性が悪く、長時間の反応もしくはマイクロウェーブ印加といった特殊な条件を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、特定のオレフィン化合物を、スルファニル、セラニル、及びスルフィノからなる群より選択される1種以上の基を含む有機物質と酸性条件下で反応させることにより得られる有機物質の誘導体が、スルファニル、セラニル、及びスルフィノからなる群より選択される1種以上の基を含む有機物質の分析に有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。上記先行技術は、(a)特定のオレフィン化合物を、スルファニル、セラニル、及びスルフィノからなる群より選択される1種以上の基を含む有機物質と酸性条件下で反応させること、並びに(b)そのような反応により得られる有機物質の誘導体が、スルファニル、セラニル、及びスルフィノからなる群より選択される1種以上の基を含む有機物質の分析に有用であることのいずれも教示も示唆もしていない。
【0008】
すなわち、本発明は以下を提供する。
【0009】
[1] スルファニル、セラニル、及びスルフィノからなる群より選択される1種以上の基を含む有機物質を、オレフィン化合物と酸性条件下で反応させて、前記有機物質の誘導体を得ることを含み、
ここで、前記オレフィン化合物は、少なくとも2個の電子求引基(ただし、ハロゲン原子を除く。)を有するエチレン構造を含む、有機物質の誘導体の製造方法。
[2] 前記エチレン構造が、2個の電子求引基を有する、[1]に記載の誘導体の製造方法。
[3] 2個の電子求引基が、前記エチレン構造を構成する同一の炭素原子に結合している、[1]又は[2]に記載の誘導体の製造方法。
[4] 少なくとも2個の電子求引基が、同一の基である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の誘導体の製造方法。
[5] 前記オレフィン化合物が、下記式(I)で表される化合物である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の誘導体の製造方法。
TIFF
2025112312000001.tif
28
160
(但し、EWG

及びEWG

は、各々独立して、電子求引基を表し、これらが結合する炭素原子と一緒になって、環を形成していてもよい。)
[6] 前記電子求引基、又はEWG

及びEWG

が、各々独立して、-C(=O)-OR

、-S(=O)

-R

、-P(=O)(-OR



、シアノ、ハロゲン原子で置換されたアルキル、カルボキシ、ニトロ、-S(=O)-R

、-C(=O)-R

、又は-C(=O)-NR



であり、
ここで、


、R

、R

、及びR

は、各々独立して、1価の炭化水素基又は1価の複素環基を表し、これらは置換基を有していてもよく、


、R

、及びR

は、各々独立して、水素原子、1価の炭化水素基、又は1価の複素環基を表し、これらは置換基を有していてもよい、[1]~[5]のいずれか1項に記載の誘導体の製造方法。
[7] 前記酸性条件が、pH6.0未満の条件である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の誘導体の製造方法。
[8] 前記有機物質が、システイン、還元型グルタチオン、γ-グルタミルシステイン、システイニルグリシン、ホモシステイン、N-アセチルシステイン、過硫化システイン、ヒポタウリン、過硫化グルタチオン、及び、システイン残基を含むペプチド性化合物からなる群より選択される1種以上である、[1]~[7]のいずれか1項に記載の誘導体の製造方法。
[9] 前記有機物質が、更にアミノ基を含み、
前記有機物質を、前記オレフィン化合物と酸性条件下で反応させた後、更に中性又は塩基性条件下で反応させて前記有機物質の誘導体を得ることを含む、[1]~[8]のいずれか1項に記載の誘導体の製造方法。
[10] (1)スルファニル、セラニル、及びスルフィノからなる群より選択される1種以上の基を含む有機物質を含む試料と、
少なくとも2個の電子求引基(ただし、ハロゲン原子を除く。)を有するエチレン構造を含むオレフィン化合物とを、
酸性条件下で混合して、前記有機物質の誘導体を含む処理試料を得ること、及び
(2)前記処理試料中の、前記有機物質の誘導体を分析すること、を含む、有機物質を含む試料の分析方法。
[11] 前記工程(2)における分析が、
(2a)前記処理試料から、前記有機物質の誘導体を分離すること、
(2b)分離された前記有機物質の誘導体を検出すること、
を含む、[10]に記載の有機物質を含む試料の分析方法。
[12] 前記試料が、更にジスルフィド化合物を含む、[10]又は[11]に記載の有機物質を含む試料の分析方法。
[13] 前記ジスルフィド化合物が、酸化型グルタチオン及びシスチンからなる群より選択される1種以上である、[12]に記載の有機物質を含む試料の分析方法。
[14] 前記有機物質が、更にアミノ基を含み、
工程(1)が、
(1’)前記試料と、前記オレフィン化合物とを、酸性条件下で混合した後、更に中性又は塩基性条件下で混合して、前記有機物質の誘導体を含む処理試料を得ることを含む、[10]~[13]のいずれか1項に記載の有機物質を含む試料の分析方法。
[15] 少なくとも2個の電子求引基(ただし、ハロゲン原子を除く。)を有するエチレン構造を含むオレフィン化合物を含む、スルファニル、セラニル、及びスルフィノからなる群より選択される1種以上の基を含む有機物質の酸性条件下での誘導体化剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スルファニル(-SH)、セラニル(-SeH)、及びスルフィノ(-S(=O)-OH)からなる群より選択される1種以上の基を含む有機物質の誘導体の新規な製造方法;かかる有機物質を含む試料を分析する新規な方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)

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