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公開番号2025130694
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-09-08
出願番号2025013448
出願日2025-01-30
発明の名称厚鋼板およびその製造方法
出願人JFEスチール株式会社
代理人個人,個人,個人,個人
主分類C22C 38/00 20060101AFI20250901BHJP(冶金;鉄または非鉄合金;合金の処理または非鉄金属の処理)
要約【課題】低温靭性に優れ、液化アンモニアによる応力腐食割れを抑制し、490MPa以上の引張強度を有する厚鋼板およびその製造方法の提供。
【解決手段】特定範囲の化学組成を有し、
表面から板厚方向に1/4厚から3/4厚までにおけるベイナイト組織の面積分率が90%以上であり、
表面から板厚方向に1mmの位置におけるビッカース硬さが210以下であり、
JIS Z 3101:1990に基づいて測定される最高硬さ試験の最大値がビッカース硬さで210以下であり、
引張強度が490MPa以上であり、
シャルピー衝撃試験における吸収エネルギーが-40℃で47J以上である、厚鋼板。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
質量%で、
C:0.010%以上0.050%未満、
Si:0.01~0.55%、
Mn:1.00~1.95%、
P:0.030%以下、
S:0.010%以下、
Al:0.001~0.060%、
Nb:0.006~0.090%、
N:0.001~0.006%
を含有し、かつ下記式(1)で表されるPcmNが0.11~0.17を満足し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、
表面から板厚方向に1/4厚から3/4厚までにおけるベイナイト組織の面積分率が90%以上であり、
表面から板厚方向に1mmの位置におけるビッカース硬さが210以下であり、
JIS Z 3101:1990に基づいて測定される最高硬さ試験の最大値がビッカース硬さで210以下であり、
引張強度が490MPa以上であり、
シャルピー衝撃試験における吸収エネルギーが-40℃で47J以上である、厚鋼板。
PcmN=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+Nb/2+V/3+23×B・・・式(1)
式(1)で、元素記号は、厚鋼板に含まれる各元素の含有量(質量%)を示し、含有しない元素は0とする。
続きを表示(約 540 文字)【請求項2】
前記化学組成が、さらに、質量%で、
Cu:0.50%以下、
Ni:0.30%以下、
Cr:0.50%以下、
Mo:0.50%以下、
V:0.08%以下、
Ti:0.05%以下、
B:0.0030%以下、
Ca:0.006%以下、
Mg:0.006%以下
から選ばれる1種以上を含有する、請求項1に記載の厚鋼板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化学組成を有するスラブを熱間圧延するに際し、1000~1250℃に加熱し、
930℃以下での累積圧下率が50%以上となる圧延をおこなった後、
Ar3点+10℃以上の温度で熱間圧延を終了し、
Ar3点以上の加速冷却開始温度で、鋼板表面の680℃から600℃までにおける平均冷却速度を10~80℃/sとし、
100~600℃である加速冷却停止温度で加速冷却を行うことにより厚鋼板とする、厚鋼板の製造方法。
【請求項4】
前記加速冷却の停止後ただちに、または、前記加速冷却の停止後、室温まで冷却した後に、500~680℃の温度に焼き戻す、請求項3に記載の厚鋼板の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、アンモニアや硫化水素を貯蔵するためのタンク、圧力容器などの溶接性および耐応力腐食割れ性が求められる溶接構造物に用いられる高強度厚鋼板とその製造方法に関する。
続きを表示(約 3,700 文字)【背景技術】
【0002】
今後、カーボンニュートラル対応でアンモニア燃料の利用拡大が進み、その利用拡大のためには大型タンクの設置が必要となる。大型タンクを製造するためには、高強度な厚鋼板や溶接継手を用いる必要があり、490MPa級(SLA365など)、570MPa級(SM570など)や610MPa級(SPV490など)の厚鋼板などの使用が検討されている。一方で、液化アンモニアを貯蔵するタンクに低合金鋼を適用した場合、応力腐食割れが発生することが知られており、適用拡大の阻害要因となっている。
【0003】
そこで、液化アンモニアによる応力腐食割れに強い鋼板に関する検討が行われている。例えば、特許文献1では、鋼中のC量を低減し、Ti量やN量を最適に制御することでTS:570MPa以上の強度と-40℃における低温靭性、さらには溶接熱影響部の靭性に優れる鋼板を製造する方法が開示されている。
特許文献2では、鋼中のC量を低減し、低降伏比を実現しながら400N/mm

級以上の引張強さを有する鋼板を製造する方法が開示されている。
また、特許文献3では、鋼中のC量を低減し、加速冷却を適用することで鋼板表層の硬さ上昇を低減しながら530~610N/mm

の引張強さを有する鋼板を製造する方法が開示されている。
また、特許文献4では、鋼板表面に脱炭層を生成させることにより、60kgf/mm

級高張力を有しつつ、優れた耐応力腐食割れ性能を確保した鋼板の製造方法が開示されている。
また、特許文献5では、鋼板表面に軟化処理を行い、表層硬度をビッカース硬度で190以下にさせることにより優れた耐応力腐食割れ性能を確保した鋼板が開示されている。
特許文献6および7では、鋼板のフェライト組織分率や結晶粒径を最適に制御し、降伏強度を440MPa以下に制御することで耐応力腐食割れ性能を確保した鋼板の製造方法が開示されている。
特許文献8では、鋼板の表層の硬さを210以下に抑えつつ、鋼板板厚中央のフェライト組織分率を最適化することで耐応力腐食割れ性能を確保した鋼板の製造方法が開示されている。
特許文献9では、鋼板の表層の組織形態を最適化しつつ、鋼板板厚中央のフェライト組織分率を最適化することで耐応力腐食割れ性能を確保した鋼板の製造方法が開示されている。
特許文献10では、鋼板1/4厚位置でのフェライトなどの組織形態を最適化することで鋼板の降伏比を下げ、液化アンモニア運搬用タンクに好適な鋼板の製造方法が開示されている。
また、特許文献11では、鋼板の焼入れもしくは直接焼入れ時に2段階で水冷することで軟質なフェライト組織を生成させ優れた耐応力腐食割れ性能を確保した鋼板の製造方法が開示されている。
また、特許文献12では、鋼板の表面に鋼中C量およびMn量の低い合わせ材を鋳込みクラッドもしくは肉盛溶接により接合することにより優れた耐応力腐食割れ性能を確保したクラッド鋼板の製造方法が開示されている。
特許文献13では、溶接熱影響部の降伏強度が45kgf/mm

以下になる合わせ材を接合することにより優れた耐応力腐食割れ性能を確保したクラッド鋼板の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2001-115233号公報
特開平11-131178号公報
特開平10-195533号公報
特開昭61-279631号公報
特開昭50-085516号公報
特許第7323090号公報
特許第7323091号公報
特許第7323088号公報
国際公開第2021/106368号
特開2021-88753号公報
特開昭62-156228号公報
特開昭57-149425号公報
特開昭50-085546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~4に記載の方法は、強度が590MPa級までである鋼板を対象としており、厚鋼板での優れた耐応力腐食割れ性を確保できるが、実際にタンクを製造する際に溶接継手を作製した際の、溶接熱影響部の耐応力腐食割れ性を確保する方法については開示されていない。
また、特許文献5では、母材や溶接金属の低温靭性については、一切考慮されていない。
特許文献6~10に記載の方法は、軟質なフェライト組織を鋼板中に含有することを前提としており、本発明で対象とする490MPa級の高強度鋼板を製造することができない場合があり、また、溶接熱影響部の耐応力腐食割れ性を確保する方法についても開示されていない。
特許文献11では、2段階冷却を適用するが特殊な水冷設備を必要とし、溶接熱影響部の耐応力腐食割れ性を確保する方法についても開示されていない。
特許文献12では、鋳込みクラッドもしくは肉盛溶接を行う必要があり、特殊な設備が必要であることや、生産性に問題があり、また、溶接熱影響部の耐応力腐食割れ性を確保する方法についても開示されていない。
特許文献13では、溶接熱影響部の応力腐食割れを抑制することができるが、大型タンクを製造するためにクラッド母材を高強度化するための圧延および熱処理条件を選択した場合、合わせ材の溶接前の硬さが高くなり、溶接熱影響部以外の応力腐食割れ性能を抑制できない。
【0006】
さらにこれらの鋼材では、液化アンモニア環境下での耐応力腐食割れ性を実験室レベルで再現した簡易試験により評価しているが、実際の液化アンモニア貯蔵タンクの環境における応力腐食割れには二酸化炭素の含有が重要な役割を示すことが知られている。しかしながら、これらの鋼材では、実際の液化アンモニアに二酸化炭素を含有する環境を十分に再現した条件での応力腐食割れを実験室レベルで再現できておらず、そのような環境での性能を確保できるか否かについては不明であった。
【0007】
また、応力腐食割れの対策としてステンレス鋼板やステンレス鋼板を合せ材としたクラッド鋼板を用いることもできるが、低合金鋼板を用いる場合に比べて著しく高コストになるといった問題がある。
【0008】
以上のように、これまでに提案された方法では、特殊な設備を必ずしも必要とはせずに、490MPa級以上の強度クラスの溶接継手の母材、溶接熱影響部の耐応力腐食割れ性を確保する技術(液化アンモニアによる応力腐食割れを抑制する技術)についても開示されていなかった。
【0009】
本発明は、低温靭性に優れ、液化アンモニアによる応力腐食割れを抑制し、490MPa以上の引張強度を有する厚鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
ここで、低温靭性に優れるとは、JIS Z 2242:2018に準拠し、厚鋼板のシャルピー衝撃試験における吸収エネルギーが-40℃で47J以上であることを指す。
また、液化アンモニアによる応力腐食割れを抑制するとは、(1)厚鋼板の液化アンモニア応力腐食割れ試験、(2)溶接熱影響部の液化アンモニア応力腐食割れ試験により、応力腐食割れが発生しないことを指す。
(1)は厚鋼板表面から板厚方向の5mmの位置までの位置で採取した5mm厚の試験片を浸漬セルに引張試験で求めた母材の降伏応力の90%を4点曲げ試験した状態で設置し、20℃、液化NH

+5vol%NH

CO

NH

飽和溶液に浸漬し、試験期間1か月で行い、目視で割れが発生しないことを指す。
(2)は、厚鋼板と厚鋼板を溶接することで得られる、余盛部を除去した溶接熱影響部において、板厚方向の5mmの位置までの位置で5mm厚の4点曲げ用の試験片を採取して、引張試験で求めた母材の降伏応力の90%を4点曲げ試験した状態で設置し、20℃、液化NH

+5vol%NH

CO

NH

飽和溶液に浸漬し、試験期間1か月で行い、夫々で割れが発生せずに、耐応力腐食割れ性に優れることを指す。
また、490MPa以上の引張強度を有するとは、JIS Z 2241:2022に準拠し、厚鋼板の引張強度が490MPa以上であることを指す。
【課題を解決するための手段】
(【0011】以降は省略されています)

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