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公開番号2025053428
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-04-07
出願番号2023162452
出願日2023-09-26
発明の名称メタボリックメモリーの評価方法及び評価システム
出願人国立大学法人 熊本大学,熊本県,医療法人社団陣内会
代理人個人
主分類G16H 20/00 20180101AFI20250331BHJP(特定の用途分野に特に適合した情報通信技術)
要約【課題】本発明は、簡便な方法により、対象における過去の高血糖状態の蓄積(メタボリックメモリー)を評価する方法及びシステムを提供することである。
【解決手段】本発明により、対象から採取した血液中のアミノ酸の濃度値に関するアミノ酸濃度データを取得する取得ステップと、前記取得ステップで取得した前記対象の前記アミノ酸濃度データに含まれる特定の複数のアミノ酸の濃度値に基づいて、前記対象の過去の高血糖状態の蓄積を表すスコア値を予測し、該スコア値に基づいて前記対象の過去の高血糖状態の蓄積を評価する評価ステップと、を含むことを特徴とする評価方法が提供される。本発明によりまた、該評価方法を実行するための、ニューラルネットワークを用いて評価システムが提供される。
【選択図】図4
特許請求の範囲【請求項1】
対象から採取した血液中のアミノ酸の濃度値に関するアミノ酸濃度データを取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した前記対象の前記アミノ酸濃度データに含まれる特定の複数のアミノ酸の濃度値に基づいて、前記対象の過去の高血糖状態の蓄積を表すスコア値を予測し、該スコア値に基づいて前記対象の過去の高血糖状態の蓄積を評価する評価ステップと、
を含むことを特徴とする評価方法。
続きを表示(約 1,200 文字)【請求項2】
前記スコア値は、対象における過去の経時的なHbA1cの推移におけるHbA1cM6%曲線下面積(AUC
HbAlc≧6%
)に相当する値である、請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
前記評価ステップにおいて、前記スコア値は、ニューラルネットワークを用いて算出される、請求項1又は2に記載の評価方法。
【請求項4】
前記評価ステップにおいて、前記スコア値は、前記アミノ酸の濃度値と、前記複数のアミノ酸の濃度値が別個に代入される複数の変数からなる重回帰式とを用いて算出される、請求項1又は2に記載の評価方法。
【請求項5】
前記評価ステップにおいて、前記スコア値は、クラスタリング解析を用いて算出される、請求項1又は2に記載の評価方法。
【請求項6】
前記特定の複数のアミノ酸が、アラニン、フェニルアラニン、プロリン、バリン、スレオニン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、リジン、メチオニン、ヒスチジン、アルギニン、シトルリン、チロシン、トリプトファン、シスチン及びオルニチンの20種類のアミノ酸である請求項1又は2に記載の評価方法。
【請求項7】
前記評価ステップにおいて、アスパラギン及びアスパラギン酸の濃度値は、それらの合計値を一つの濃度値として用い、グルタミン及びグルタミン酸の濃度値は、グルタミン/グルタミン酸比を一つの濃度値として用いる、請求項6に記載の評価方法。
【請求項8】
前記対象が女性であり、前記特定の複数のアミノ酸が、バリン、アルギニン、メチオニン、アスパラギン、アスパラギン酸、シトルリン、グルタミン、グルタミン酸、チロシン及びイソロイシンの10種類のアミノ酸であって、前記評価ステップにおいて、アスパラギン及びアスパラギン酸の濃度値はそれらの合計値を一つの濃度値として用い、グルタミン及びグルタミン酸の濃度値はグルタミン/グルタミン酸比を一つの濃度値として用いる、請求項1又は2に記載の評価方法。
【請求項9】
前記対象が男性であり、前記特定の複数のアミノ酸が、アラニン、フェニルアラニン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、トリプトファン、オルニチン、バリン、プロリン、アスパラギン及びアスパラギン酸であって、前記評価ステップにおいて、アスパラギン及びアスパラギン酸の濃度値はそれらの合計値を一つの濃度値として用い、グルタミン及びグルタミン酸の濃度値はグルタミン/グルタミン酸比を一つの濃度値として用いる、請求項1又は2に記載の評価方法。
【請求項10】
さらに、前記評価ステップにおける前記過去の高血糖状態の蓄積を表すスコア値を用い、予め定めた評価指標に基づいて、糖尿病の合併症の発症リスクを予測する予測ステップを含む、請求項1又は2に記載の評価方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、血液中のアミノ酸濃度を利用した対象におけるメタボリックメモリーを推算する方法及びそれを実行するシステムに関する。本発明はまた、メタボリックメモリーを推算することにより、対象における糖尿病合併症のリスクを評価または予測する方法及びそれを実行するシステム等に関する。
続きを表示(約 2,700 文字)【背景技術】
【0002】
糖尿病患者では、高血糖状態は身体に記憶され、その後の糖尿病合併症の発症・進展に長期的影響を及ぼすとして“メタボリックメモリー”の概念が近年、注目されている。具体的には、高血糖状態が長く続くと、体内のさまざまな細胞や組織において酸化ストレスが増加し、DNA、タンパク質、脂質などが変性や損傷を受け、このような細胞レベルでの変化は、後に正常な血糖状態が回復しても完全に元に戻らないことがあり、これがメタボリックメモリーとして記録され、糖尿病関連の合併症のリスクを長期的に高め続けると言われている。このことは、糖尿病診断を受けた際の初期治療の重要性を意味しており、初期の高血糖コントロールが適切であれば、メタボリックメモリーの影響を最小限に抑えることができると考えられており、これにより、糖尿病患者の長期的な合併症のリスクを低減することが期待されている。
【0003】
このように、メタボリックメモリーの存在とその合併症発症・進展に対する影響については、周知の事実であるが、その定量化については本発明者らを含むグループにより初めて報告された(非特許文献1:志垣拓郎ほか、「Modeling&simulation解析を用いたメタボリックメモリーの定量的評価」日本薬学会第141年会で発表、2021年3月26日~29日)。そこでは、患者の過去10年間の経時的なHbA1cの推移を基に、メタボリックメモリーを推算する方法が示されている。高血糖状態の蓄積をHbA1c曲線下面積で表し、腎機能低下との量的関係性について非線形混合効果モデル(NONMEM)を用いてモデル化している。具体的には、各患者の経時的なHbA1cの推移を基にHbA1cM6%曲線下面積(AUCHbAlc≧6%)を算出し、性別、年齢、糖尿病性網膜症の各患者因子を共変量としてeGFR変化量を予測するモデルが示されている。
【0004】
しかしながら、この方法による評価は、長期間の過去の詳細なHbA1cの推移の情報が必要であり、臨床で用いるのには実用的でないという問題がある。よって、より簡便な方法でメタボリックメモリーを推算する方法が望まれている。
【0005】
新規のバイオマーカーとして、生体内の代謝物の中でも代謝経路の中心的存在であるアミノ酸が着目されている。そして、血中のアミノ酸濃度をもとに、疾患リスクを予測することが行われている。
【0006】
例えば、人間ドック受診者を対象に、アミノ酸濃度を用いて4年後の糖尿病発症を予測する知見が報告されている(非特許文献2:山門實:人間ドック32(5):713-725(2018))。そこでは、検査から4年以内の糖尿病発症者、検査時点で糖尿病を罹患している者それぞれに対し、4年以内の糖尿病非発症者との各アミノ酸の判別能を解析した結果、4年以内の糖尿病発症者は、糖尿病罹患者と類似したアミノ酸バランスが見られることから、糖尿病の前段階である内臓脂肪蓄積の指標である内臓脂肪面積値と相関する血漿中のアミノ酸濃度の多変量式を糖尿病リスク式として作成したことが記載されている。当該糖尿病リスク式中には、アスパラギン、グリシン、アラニン、バリン、チロシン、トリプトファンのアミノ酸が含まれており、アラニン、バリン、チロシン、トリプトファンは4年以内の糖尿病非発症者と比較して4年以内の糖尿病発症者では有意に高値を示し、一方、グリシンは有意に低値を示すことが開示されている。しかし、これは、糖尿病の発症のリスクを評価するものであり、糖尿病を発症後の患者を対象にしたメタボリックメモリーを予測した報告ではない。
【0007】
また、対象におけるHbA1cの変化量を基に、糖尿病の発症リスクを予測するヘルスケアデータ分析方法が報告されている(特許文献1:特開2020-135489)。しかしこれも、糖尿病の発症のリスクを評価するものであり、糖尿病を発症後の患者を対象にしたメタボリックメモリーを予測した報告ではない。
【0008】
また、糖尿病との関連では、例えば以下のような報告がある。分岐鎖アミノ酸(イソロイシン、ロイシン、バリン)や芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン)の濃度は糖尿病発症リスクと関連することが報告されている(非特許文献3:Ahola-Olli A.V., et al. Diabetologia, (2019) 62(12):2298-2309)。分岐鎖アミノ酸とインスリン抵抗性の間に強い関連があったことが報告されている(非特許文献4:Newgard C, et al. Cel Metab, (2012) 15(5):606-14)。チロシン濃度は細小血管症のリスク低下と関連していたことが報告されている(非特許文献5:Welsh P., et al. Diabetologia, (2018) 61:1581-1591)。
【0009】
さらに、例えば、アミノ酸濃度と生体状態とを関連付ける方法が開示されている(特許文献2-4)。また、アミノ酸濃度を用いてメタボリックシンドロームの状態を評価する方法(特許文献5)や、アミノ酸濃度を用いて内臓脂肪蓄積の状態を評価する方法(特許文献6)、アミノ酸濃度を用いて耐糖能異常の状態を評価する方法(特許文献7)、アミノ酸濃度を用いてBMI(Body Mass Index)及びVFA(Visceral Fat Area)で定義される見掛け肥満、隠れ肥満及び肥満のうち少なくとも1つの状態を評価する方法(特許文献8)、及び、アミノ酸濃度を用いて脂肪肝、NAFLD(non-alcoholic fatty liver disease)、及びNASH(non-alcoholic steatohepatitis)のうち少なくとも1つを含む脂肪性肝疾患の状態を評価する方法(特許文献9)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
特開2020-135489
国際公開第2004/052191号
国際公開第2006/098192号
国際公開第2009/054351号
国際公開第2008/015929号
国際公開第2009/001862号
国際公開第2009/054350号
国際公開第2010/095682号
国際公開第2013/002381号
【非特許文献】
(【0011】以降は省略されています)

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