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公開番号2025132386
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-09-10
出願番号2024029907
出願日2024-02-29
発明の名称アポトーシスの阻害剤、及び神経変性疾患治療剤
出願人国立大学法人山口大学
代理人個人
主分類C12N 15/12 20060101AFI20250903BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】本発明の課題は、臨床応用において、より適切なアポトーシスの抑制剤を提供することにある。
【解決手段】(a-1)特定のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(a-2)前記特定のアミノ酸配列からなるポリペプチドと85%以上の配列同一性を有し、かつ細胞内でアポトーシスの阻害作用を有するポリペプチド;
(a-3)前記特定のアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて1又は数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換したアミノ酸配列であり、かつ細胞内でアポトーシスの阻害作用を有するポリペプチド;
の(a-1)~(a-3)のいずれかに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有効成分とする、アポトーシス抑制剤を調製する。
【選択図】図3A
特許請求の範囲【請求項1】
(a-1)配列番号1~4のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(a-2)配列番号1~4のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと85%以上の配列同一性を有し、かつ細胞内でアポトーシスの阻害作用を有するポリペプチド;
(a-3)配列番号1~4のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて1又は数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換したアミノ酸配列であり、かつ細胞内でアポトーシスの阻害作用を有するポリペプチド;
の(a-1)~(a-3)のいずれかに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有効成分とする、アポトーシス抑制剤。
続きを表示(約 910 文字)【請求項2】
(b-1)配列番号1~4のいずれかに記載のアミノ酸配列のうち、連続する50~370アミノ酸からなるポリペプチド;
(b-2)配列番号1~4のいずれかに記載のアミノ酸配列のうち、連続する50~370アミノ酸からなるポリペプチドと85%以上の配列同一性を有し、かつ細胞内でアポトーシスの阻害作用を有するポリペプチド;
(b-3)配列番号1~4のいずれかに記載のアミノ酸配列のうち、連続する50~370アミノ酸からなるポリペプチドにおいて1又は数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換したアミノ酸配列であり、かつ細胞内でアポトーシスの阻害作用を有するポリペプチド;
の(b-1)~(b-3)のいずれかに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有効成分とする、アポトーシス抑制剤。
【請求項3】
前記ポリペプチドにおいて、配列番号5に記載のアミノ酸配列、配列番号6に記載のアミノ酸配列、配列番号7に記載のアミノ酸配列、及び配列番号8に記載のアミノ酸配列から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含有する、請求項1に記載のアポトーシス抑制剤。
【請求項4】
前記ポリペプチドにおいて、配列番号5に記載のアミノ酸配列、配列番号6に記載のアミノ酸配列、配列番号7に記載のアミノ酸配列、及び配列番号8に記載のアミノ酸配列から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含有する、請求項2に記載のアポトーシス抑制剤。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドが発現ベクターに組み込まれていることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のアポトーシス抑制剤。
【請求項6】
前記発現ベクターがウイルスベクターであることを特徴とする、請求項5に記載のアポトーシス抑制剤。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドが核酸送達媒体に保持されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれかにに記載のアポトーシス抑制剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のアポトーシス抑制剤を含有する、神経変性疾患治療剤。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明はアポトーシスの阻害剤や、神経変性疾患治療剤に関する。
に関する。
続きを表示(約 3,600 文字)【背景技術】
【0002】
脳では遺伝的背景や細胞ストレスが原因となり、加えて老化の進行と共に領域特異的なアポトーシスや神経変性が引き起こされることが知られている。このアポトーシスには、ユビキチン-プロテアソーム系が加齢により低下することが関与しているといわれている。このユビキチン-プロテアソーム系は、多数のユビキチンが結合したタンパク質を分解することができる。具体的には、異常タンパク質が多数のユビキチンによって標識され、そのユビキチンの鎖が26Sプロテアソームを構成する制御ユニットRP(PA700)に結合し、標的タンパク質のユビキチン鎖が切り離されると共に、26Sプロテアソームを構成する触媒ユニットCP(20Sプロテアソーム)によって標的タンパク質は分解される(非特許文献1参照)。
【0003】
本発明者らはこれまで、ハンチンチン関連タンパク質1(Huntingtin-associated protein 1:以下、「HAP1」ともいう)についての研究を進めてきた。このHAP1は脳の視床下部等に特異的に分布する細胞質封入体、すなわち斑点小体(stigmoid body:以下、「STB」ともいう)に局在するタンパク質である(非特許文献2参照)。本発明者らは、脳内のHAP1の発現パターンに着目し、一般的に神経変性の起こりやすい大脳皮質、大脳基底核、海馬、視床、脳幹運動核、小脳、脊髄前角等の領域にはほとんど発現が認められず、それ以外の神経変性の起こりにくい視床下部や扁桃体領域などの領域に特異的に高発現することを報告した(非特許文献3参照)。HAP1はハンチントン病の原因分子であるハンチンチン(huntingtin)に結合する分子として同定された分子である(非特許文献4)。本発明者らは、HAP1がハンチントン病や球脊髄性筋萎縮症(SBMA)のモデル培養細胞における細胞死に対して保護作用をもつこと、その際には病原タンパク質にHAP1が結合することも証明している(非特許文献5参照)。なお、ハンチントン病は神経変性疾患の一つであり、ハンチンチン遺伝子内のポリグルタミン鎖の異常伸長によって引き起こされる遺伝性疾患である。
【0004】
さらに本発明者らは近年、培養細胞系においてHAP1がプロテアソーム活性阻害剤により誘導された細胞死に対しても保護作用を示すことを明らかにしている。プロテアソーム活性は老化に伴い低下することが知られており、数々の神経変性疾患の発症トリガーとなる因子のひとつである。すなわち、HAP1の細胞保護作用はハンチントン病やSBMAのような異常なポリグルタミン鎖を病因とする遺伝性の神経変性疾患だけでなく、老化に伴う多くの神経変性疾患に対して広く有効である可能性が高いと期待されているが、その作用機序は不明である。また、HAP1、特にヒトのHAP1の研究者そのものが世界的に極めて少数であることからHAP1に関する研究は世界的に進んでいないのが現状である。そのため、HAP1のメカニズムについては不明な点が多く、HAP1とSTBとの関係も不明な点が多い。
【0005】
こうしたなか、本発明者らは、HAP1をコードするポリヌクレオチドを有効成分とする、アポトーシスの阻害剤について開示した(特許文献1参照)。しかしながら、全長約600アミノ酸長からなるHAP1の全てのアミノ酸配列を神経変性疾患の治療分子として用いるのは難易度が高いと考えられる。臨床応用のためには、細胞保護作用に必須となるHAP1のアミノ酸配列の特定する必要があると思われるが、その点を精査した知見は全く存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特開2021-158940号公報
【非特許文献】
【0007】
佐伯 泰 Journal of Japanese Biochemical Society 87(6): 705-722 (2015) doi:10.14952/SEIKAGAKU.2015.870705
Fujinaga et al., Histochem Cell Biol, Volume 128, 2007, pages 335-348
Fujinaga et al., J Comp Neurol, Volume 478, Issue 14 October 2004 Pages 88-109
Li et al., Nature volume 378, pages 398-402 (1995)
Takeshita et al., Human Molecular Genetics, Volume 15, Issue 15, 1 August 2006, Pages 2298-2312
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、HAP1の断片であって、アポトーシス抑制効果が高い薬剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、HAP1を断片化して培養細胞内に発現させ、その培養細胞内での断片化HAP1の形態を観察してきた。その過程で、偶然にも、所定のHAP1断片において、生体内に近い構造を維持していることを見出した。そこで、その所定のHAP1断片と全長HAP1を調製し、それぞれを培養細胞内へ遺伝子導入してプロテアソーム阻害ストレスを与えた際のアポトーシスの抑制作用の有無について検討した。その結果、驚くことに、HAP1のN末端側の所定の断片のみの方が、完全長HAP1よりもアポトーシスの抑制効果が高いことを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕(a-1)配列番号1~4のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(a-2)配列番号1~4のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと85%以上の配列同一性を有し、かつ細胞内でアポトーシスの阻害作用を有するポリペプチド;
(a-3)配列番号1~4のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて1又は数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換したアミノ酸配列であり、かつ細胞内でアポトーシスの阻害作用を有するポリペプチド;
の(a-1)~(a-3)のいずれかに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有効成分とする、アポトーシス抑制剤。
〔2〕(b-1)配列番号1~4のいずれかに記載のアミノ酸配列のうち、連続する50~370アミノ酸からなるポリペプチド;
(b-2)配列番号1~4のいずれかに記載のアミノ酸配列のうち、連続する50~370アミノ酸からなるポリペプチドと85%以上の配列同一性を有し、かつ細胞内でアポトーシスの阻害作用を有するポリペプチド;
(b-3)配列番号1~4のいずれかに記載のアミノ酸配列のうち、連続する50~370アミノ酸からなるポリペプチドにおいて1又は数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換したアミノ酸配列であり、かつ細胞内でアポトーシスの阻害作用を有するポリペプチド;
の(b-1)~(b-3)のいずれかに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有効成分とする、アポトーシス抑制剤。
〔3〕前記ポリペプチドにおいて、配列番号5に記載のアミノ酸配列、配列番号6に記載のアミノ酸配列、配列番号7に記載のアミノ酸配列、及び配列番号8に記載のアミノ酸配列から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含有する、上記〔1〕に記載のアポトーシス抑制剤。
〔4〕前記ポリペプチドにおいて、配列番号5に記載のアミノ酸配列、配列番号6に記載のアミノ酸配列、配列番号7に記載のアミノ酸配列、及び配列番号8に記載のアミノ酸配列から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含有する、上記〔2〕に記載のアポトーシス抑制剤。
〔5〕前記ポリヌクレオチドが発現ベクターに組み込まれていることを特徴とする、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のアポトーシス抑制剤。
〔6〕前記発現ベクターがウイルスベクターであることを特徴とする、上記〔5〕に記載のアポトーシス抑制剤。
〔7〕前記ポリヌクレオチドが核酸送達媒体に保持されていることを特徴とする、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のアポトーシス抑制剤。
〔8〕上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のアポトーシス抑制剤を含有する、神経変性疾患治療剤。
【発明の効果】
(【0011】以降は省略されています)

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