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公開番号
2025160914
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-10-23
出願番号
2025064545
出願日
2025-04-09
発明の名称
耐水素材料及び耐水素構造部品
出願人
国立大学法人九州大学
,
日本碍子株式会社
代理人
個人
,
個人
,
個人
主分類
C22C
9/06 20060101AFI20251016BHJP(冶金;鉄または非鉄合金;合金の処理または非鉄金属の処理)
要約
【課題】水素雰囲気下で作動する構造部材に求められる素材強度と破壊靭性を両立し、かつ、それらの特性が水素雰囲気下で低下しない若しくは低下しにくい、ヤング率の高い耐水素材料を提供する。
【解決手段】水素雰囲気下で作動させて用いられる耐水素構造部品に加工されるための耐水素材料であって、耐水素材料が、Ni:13.0~30.0質量%、Sn:3.0~10.0質量%、Mn:0~0.5質量%、及びFe:0~0.5質量%を含み、残部がCu及び不可避不純物からなる銅合金で構成されており、耐水素材料が、大気雰囲気下及び90MPa以上120MPa以下の水素雰囲気下の各々において、ひずみ速度5×10
-5
s
-1
以下で行われる低ひずみ速度引張試験により、700MPa以上の引張強度を呈し、耐水素材料が、低ひずみ速度引張試験により決定される、0.80以上の相対絞り(RRA)を呈し、耐水素材料が、135GPa以上のヤング率を呈する、耐水素材料。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
水素雰囲気下で作動させて用いられる耐水素構造部品に加工されるための耐水素材料であって、前記耐水素材料が、
Ni:13.0~30.0質量%、
Sn:3.0~10.0質量%、
Mn:0~0.5質量%、及び
Fe:0~0.5質量%、
を含み、残部がCu及び不可避不純物からなる銅合金で構成されており、
前記耐水素材料が、大気雰囲気下及び90MPa以上120MPa以下の水素雰囲気下の各々において、ひずみ速度5×10
-5
s
-1
以下で行われる低ひずみ速度引張試験により、700MPa以上の引張強度を呈し、
前記耐水素材料が、前記低ひずみ速度引張試験により決定される、0.80以上の相対絞り(RRA)を呈し、
前記耐水素材料が、135GPa以上のヤング率を呈する、耐水素材料。
続きを表示(約 740 文字)
【請求項2】
前記耐水素材料が、大気雰囲気下及び90MPa以上120MPa以下の水素雰囲気下の各々において、45MPa・m
1/2
以上の破壊靭性値K
IC
を呈する、請求項1に記載の耐水素材料。
【請求項3】
前記銅合金におけるNi含有量が20.0質量%を超え30.0質量%以下であり、前記耐水素材料が140GPaを超えるヤング率を呈する、請求項1に記載の耐水素材料。
【請求項4】
前記耐水素材料が、大気雰囲気下及び90MPa以上120MPa以下の水素雰囲気下の各々において、520M以上の0.2%耐力を呈する、請求項1に記載の耐水素材料。
【請求項5】
前記耐水素材料が、大気雰囲気下においてVノッチシャルピー衝撃試験により測定した場合に16J/cm
2
以上のシャルピー衝撃値を呈する、請求項1に記載の耐水素材料。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の耐水素材料で製造された、耐水素構造部品。
【請求項7】
前記耐水素構造部品が、高圧水素に直接接する、容器、配管、バルブ、及び継手、並びに水素圧縮機の構成部材からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の耐水素構造部品。
【請求項8】
前記耐水素構造部品が、前記水素圧縮機の構成部材であり、前記水素圧縮機の構成部材が、往復式圧縮機のピストン及びシリンダ、回転式圧縮機のロータ及びケーシング、軸流式圧縮機のインペラ、並びに遠心式圧縮機のインペラ及びシャフトからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項7に記載の耐水素構造部品。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水素材料及び耐水素構造部品に関するものである。
続きを表示(約 2,900 文字)
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池車、発電所等で使用される燃料として水素の需要が急速に高まっている。燃料としての水素は生産、搬送、貯蔵及び使用の各工程において容器や機器の部材に直接触れるが、多くの金属材料は水素脆化を起こすため、使用上の配慮が必要である。特に、水素下で作動する部品は高い強度と靭性が要求されるため、耐水素脆性への配慮が強く求められる。
【0003】
水素下で作動する部材としては水素圧縮機の部品、例えば、往復式圧縮機のピストン及びシリンダ、回転式圧縮機のロータ及びケーシング、軸流式圧縮機のインペラ、並びに遠心式圧縮機のインペラ及びシャフトなどが挙げられる。現在、これらの構造部材、とりわけ作動部品に対しては、SCM431やSCM435といったクロムモリブデン鋼が用いられることが多いが、水素脆性に配慮して低負荷応力範囲に限った運転を行っているのが実情である。
【0004】
水素圧縮機には水素の需要の急速な高まりに対応すべく、更なる高性能化が求められている。例えば、1)シャフト及びインペラの高速回転化に伴い、高性能化、水素圧縮機の連結数の低減、及びインペラの削減が求められる。また、2)高速回転時の振動を抑止すべく、シャフトやインペラには高剛性を維持することが求められる。さらに、3)グリーン水素製造用途においてはエネルギー供給が安定的ではない太陽光や風力を利用するため、DSS(Daily Start&Stop;毎日発停運転)といったような間歇運転が求められる。しかしながら、クロムモリブデン鋼製の構造材は、水素脆性を有しているため、高速回転化や間歇運転の実施という観点で不十分である。
【0005】
一方で、ベリリウム銅合金は耐水素性を呈しうることが知られている。例えば、特許文献1(特許第6755521号公報)には、水素と接触する状態で用いられる耐水素部材が開示されており、この熱交換部材は、Beを0.20質量%以上2.70質量%以下の量で含み、Co、Ni及びFeの合計の含有量が0.20~2.50質量%であり、Cu、Be、Co、Ni及びFeの合計含有量が99質量%以上である、ベリリウム銅合金からなることが開示されている。特許文献2(特開2021-115631号公報)には、耐水素脆化特性が良好な耐水素部材の製造方法が開示されており、第一及び第二のベリリウム銅合金部材の表面をアルカリ溶液中に浸漬し、それらの銅合金部材の表面をギ酸等の有機酸溶液中で煮沸し、第一と第二の銅合金部材を加熱及び加圧して接合する方法が開示されている。特許文献3(WO2022/149561)には、互いに拡散接合された複数の時効硬化性銅合金製の部材で構成される、溶体化処理及び時効処理が施された銅合金接合体が開示されている。この銅合金接合体は、この銅合金接合体は、接合部を含め耐水素脆化特性に優れると共に高い引張強度を有するとされている。具体的には、特許文献3には、ひずみ速度5×10
-5
s
-1
以下の範囲(例えば5×10
-5
s
-1
)で行う低ひずみ速度引張(SSRT:Slow Strain Rate Tensile)試験において、水素ガス中での引張強度が520MPa以上であり、かつ、RRA(相対絞り)が0.8以上である銅合金接合体が開示されている。
【0006】
したがって、耐水素特性を呈しかつクロムモリブデン鋼より優れた強度を有するベリリウム銅合金を水素下で作動する部品として使用することは、高速運転や間歇運転など作動条件を拡充する上で有利といえる。しかし、部品への負荷時の撓みや高速回転時の径方向の膨張などに影響する材料のヤング率は、クロムモリブデン鋼が200GPaであるのに対し、ベリリウム銅合金は127GPaとやや低めである。このため、特に水素雰囲気下での部品の回転数向上のために、(水素雰囲気下での高強度、高破壊靭性値等の)耐水素脆性を呈し、かつ、少しでも高いヤング率を有する材料が求められていた。
【0007】
ところで、ベリリウム銅合金に比肩する強度を有する合金としてニッケルスズ銅合金が知られている。特許文献4(特許第6492057号公報)には、5~20質量%のNi、5~10質量%のSn、不純物、微量添加物及び残部銅からなるスピノーダル合金であって、少なくとも517MPa(75ksi)の0.2%オフセット耐力及び少なくとも16J(12フィートポンド)の衝撃靭性を有するものが開示されている。特許文献5(特許第6651464号公報)には、9~15.5重量%のNiと、6~9重量%のSnとを含み、残部が銅であるスピノーダル硬化銅-ニッケル-錫合金を含む、サッカーロッドのためのカップリングが開示されており、この合金は、少なくとも95ksiの0.2%オフセット降伏強さと、室温において少なくとも22フィートポンドのシャルピーV切り欠き衝撃エネルギーとを有するとされている。特許文献4及び5は耐水素特性に関する検討は何らなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
特許第6755521号公報
特開2021-115631号公報
WO2022/149561
特許第6492057号公報
特許第6651464号公報
【非特許文献】
【0009】
松永久生、山辺純一郎、及び松岡三郎、「クロムモリブデン鋼を高圧水素ガス環境中で使用するための強度設計指針の提案」、表面科学 Vol. 36, No. 11, pp. 562-567, 2015
【発明の概要】
【0010】
上述のとおり、クロムモリブデン鋼製の構造材は、水素脆性を有しているため、水素雰囲気下での高負荷応力での運転、とりわけ間歇運転や高速回転化の観点で不十分である。例えば、現在使用されているSCM435は、大気下では優れた破壊靭性を呈するが、水素劣化が起こることが確認されており、疲労を生起させる間歇運転には不向きである。したがって、水素雰囲気下で劣化しにくいベリリウム銅合金が、クロムモリブデン鋼の代替材料の候補として期待される。しかしながら、クロムモリブデン鋼のヤング率が約200GPaであるのに対し、ベリリウム銅合金のヤング率は約133GPaとやや低めである。このため、特に水素雰囲気下での部品の回転数向上の観点から、水素下で高強度を維持し、かつ、少しでも高いヤング率を実現するための改善が求められていた。また、シャフトやインペラのような回転構造体に求められる素材強度と破壊靭性は、トレードオフの関係にある。このため、水素雰囲気下で作動する構造部材に求められる素材強度と破壊靭性を両立し、かつ、それらの特性が水素雰囲気下で低下しにくい(すなわち耐水素脆化特性に優れた)耐水素材料が望まれる。
(【0011】以降は省略されています)
この特許をJ-PlatPat(特許庁公式サイト)で参照する
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