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公開番号
2025144337
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-10-02
出願番号
2024044073
出願日
2024-03-19
発明の名称
発光性イオン結晶
出願人
国立大学法人九州大学
,
日産化学株式会社
代理人
弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
主分類
C09K
11/06 20060101AFI20250925BHJP(染料;ペイント;つや出し剤;天然樹脂;接着剤;他に分類されない組成物;他に分類されない材料の応用)
要約
【課題】発光効率の高いフォトンコンバージョン発光体を提供すること。
【解決手段】イオン性部位及び発光性部位を有する発光性分子イオンと、該発光性分子イオンの対イオンとを含み、前記発光性分子イオン同士の分子間距離が3オングストローム以上である、発光性イオン結晶。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
イオン性部位及び発光性部位を有する発光性分子イオンと、該発光性分子イオンの対イオンとを含み、前記発光性分子イオン同士の分子間距離が3オングストローム以上である、発光性イオン結晶。
続きを表示(約 1,100 文字)
【請求項2】
前記イオン性部位が、カルボキシレート、サルフェート、スルホネート、チオシアネート、ニトレート、アルミネート、ボレート、ホスフェート、アミド、アンチモネート、イミド及びメチドからなる群から選択される少なくとも一種のアニオン種、又は、
イミダゾリウム、イミダゾリニウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、ピペリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウム、アンモニウム及びスルホニウムからなる群から選択される少なくとも一種のカチオン種である、請求項1に記載の発光性イオン結晶。
【請求項3】
前記イオン性部位が前記アニオン種であり、前記対イオンがイミダゾリウム、イミダゾリニウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、ピペリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウム、アンモニウム及びスルホニウムからなる群から選択される少なくとも一種のカチオン種である、請求項2に記載の発光性イオン結晶。
【請求項4】
前記発光性部位が、ナフタレン構造、アントラセン構造、テトラセン構造、ピレン構造、ペリレン構造、ビフェニル構造、ターフェニル構造、ペリレンジイミド構造、ナフタレンジイミド構造、又はBODIPY(ホウ素ジピロメタン)構造である、請求項1に記載の発光性イオン結晶。
【請求項5】
光を吸収して励起一重項状態となり、照射光より長波長の光を放出する、請求項1に記載の発光性イオン結晶。
【請求項6】
光を吸収して励起三重項状態となるドナー分子として機能する増感剤をさらに含み、前記発光性分子イオンが前記増感剤からの三重項エネルギー移動を受けて励起一重項状態となり発光する、請求項1に記載の発光性イオン結晶と増感剤とを含む発光体。
【請求項7】
前記増感剤が、ポルフィリン構造、フタロシアニン構造、フラーレン構造、又は2-フェニルピリジナト構造を含む化合物である、請求項6に記載の発光性イオン結晶と増感剤とを含む発光体。
【請求項8】
前記発光性分子イオン同士の分子間距離が3~20オングストロームである、請求項1に記載の発光性イオン結晶。
【請求項9】
前記増感剤と前記発光性分子イオンのモル比率が1:100~1:100,000である、請求項6に記載の発光性イオン結晶と増感剤とを含む発光体。
【請求項10】
請求項1乃至請求項5及び請求項8のうち何れか一項に記載の発光性イオン結晶又は請求項6、請求項7及び請求項9のうち何れか一項に記載の発光体を含み、照射光と異なる波長の光を発光する、フォトンコンバージョン発光体。
(【請求項11】以降は省略されています)
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトンコンバージョン材料に関し、詳細には、フォトンコンバージョン発光性イオン結晶及びそれを含む発光体に関するものである。
続きを表示(約 4,700 文字)
【背景技術】
【0002】
紫外領域から近赤外領域の光源を、所望する波長に効率的に変換、制御する技術は産業的に重要であり、例えば人工光合成、ペロブスカイト太陽電池等の太陽電池、光触媒、ディスプレイ等の表示素子、さらにバイオイメージング技術や光診断治療など、これらの効率を飛躍的に向上させることが期待される。
有機物質の波長変換は、基底状態にある物質が光を吸収し励起状態となった後、その状態から緩和され基底状態に戻る際に光を発するが、その光は吸収光よりも長波長となるため起こる。この現象は蛍光、ダウンコンバージョンと呼ばれ、古くからこの現象は知られている。
ダウンコンバージョンに対して、アップコンバージョン発光も技術的に可能である。有機物質を用いる際には、アップコンバージョンは三重項-三重項消滅(triplet-triplet annihilation;TTA)の機構を経て起こる。三重項-三重項消滅からなるフォトンアップコンバージョン(TTA-UC)は、ドナーとして機能する増感剤と、アクセプターとして機能する発光体を含む系からなる。まず長波長側の励起光を吸収して励起一重項状態となったドナー分子(S
D
)が、系間交差(ISC)を経て励起三重項状態に遷移する(T
D
)。この励起三重項状態となったドナー分子からアクセプター分子に三重項エネルギーが移動し(三重項-三重項エネルギー移動(TTET;triplet-triplet energy transfer))、アクセプター分子の三重項励起状態が生成する(T
A
)。この三重項励起状態にあるアクセプター分子同士が拡散・衝突することによりTTAが生じると、衝突した2分子のうち1分子が三重項状態よりも高い励起一重項状態(S
A
)となり、アップコンバージョン発光が生じる。
いずれの発光現象に於いても、いかに発光体が効率的に発光するかによって物質としての優位性が決まる。有機の発光材料は、ナフタレンやアントラセンに代表される多芳香環化合物が汎用的に利用される。
発光材料の光学特性に於いては、蛍光乃至りん光スペクトル測定により発光の極大発光波長や発光波長の半値幅を評価し、絶対量子収率測定により量子収率を評価する。これらの測定に於いては、専ら発光材料を十分に希釈させた有機溶媒中に分散させた評価サンプルを準備する。これは前記多芳香環系の分子は、完全に分子分散され、分子間で相互作用しない条件で最大の発光効率が観察されるためである。一方、高濃度の溶液中や、結晶やアモルファスを含む固体状態、高分子などにドープしたフィルム形態などの条件では、多芳香環系の分子間でπ-πスタッキング等の非共有結合が働き、分子間距離が非常に近接することによる凝集やエキシマーの形成が起こる。これらが発光の失活部位となり、分子分散した希釈溶媒中と比較して著しい発光効率の低下が起こる。このことから太陽電池などへの実製品への適用に於いては、発光材料は十分に発光分子が分散された形態で提供することが最も望ましいが、有機溶媒を含むことになるため、事実上困難となっている。
固体やフィルム形態で凝集などの発光分子間の相互作用を抑制する手段として、発光分子に立体障害の大きな官能基を付与し、分子体積を大きくすることで非共有結合を抑制する方法が研究されている。この手法は発光分子の凝集を抑制する効果が認められる一方、分子体積が大きいために分子の流動性(液体性)も付与されてしまい、例えばフィルム材料中で相分離が生じたり、フィルム自体が軟化しマトリックスとしての特性に負の影響を及したりする虞がある。また、アップコンバージョン発光に於いては、しばしば分子間距離が離れすぎるがゆえに、三重項エネルギー移動が効率的に起こらず、発光効率を妨げる要因となる。これらの背景から、凝集やエキシマーを形成することなく、エネルギー移動
効率も妨げることの無い適切な分子間距離を保ち、且つ発光材料として十分な安定性を有する、発光効率に優れた固体材料の開発が望まれていた。
【0003】
ドナー化合物及びイオン液体であるアクセプター化合物に加え、マトリクス樹脂を用いることにより、熱又は光硬化によりフィルム等の成形体の作成が可能で、発光効率が高く、保存安定性に優れるアップコンバージョン発光体形成用組成物が提案されている(特許文献1)。
【0004】
前記TTA-UCの失活の要因となる残存酸素の影響や、実製品への展開を考慮して揮発性溶媒の使用を回避するべく、エチレンオキシド・エピクロルヒドリン共重合体やポリウレタンなどの柔らかいポリマーマトリクス内にドナー分子とアクセプター分子を分散させた固体材料が提案されている(非特許文献1~非特許文献3等)。
また、還元能を有する構造を組み込み、系中の酸素濃度を下げる方法も提案されている(非特許文献4、非特許文献5等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2021-80335号公報
【非特許文献】
【0006】
Castellano et al., J. Am. Chem. Soc., 129, 12652 (2007)
Castellano et al., Chem. Mater., 24, 2250 (2012)
A. Monguzzi et al., Advanced Energy Materials, 3, 680 (2013)
F. Li et. al., J. Am. Chem. Soc., 135, 5029 (2013)
F. Marsico et al., J. Am. Chem. Soc., 136, 12652 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし上述のポリマーマトリクスを使用した場合、酸素の拡散の低下は防げるものの、ドナー・アクセプター分子の拡散係数も低下して量子収率が低下するとともに、経時的にドナー・アクセプター分子の凝集や相分離が起こる懸念がある。
また還元能を利用する方法にあっても、長期安定性に欠ける懸念がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以下の構成を備える発光性イオン結晶により、発光効率の高い新規なフォトンコンバージョン発光体を得られることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、第1観点として、イオン性部位及び発光性部位を有する発光性分子イオンと、該発光性分子イオンの対イオンとを含み、前記発光性分子イオン同士の分子間距離が3オングストローム以上である、発光性イオン結晶に関する。
第2観点として、前記イオン性部位が、カルボキシレート、サルフェート、スルホネート、チオシアネート、ニトレート、アルミネート、ボレート、ホスフェート、アミド、アンチモネート、イミド及びメチドからなる群から選択される少なくとも一種のアニオン種、又は、イミダゾリウム、イミダゾリニウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、ピペリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウム、アンモニウム及びスルホニウムからなる群から選択される少なくとも一種のカチオン種である、第1観点に記載の発光性イオン結晶に関する。
第3観点として、前記イオン性部位が前記アニオン種であり、前記対イオンがイミダゾリウム、イミダゾリニウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、ピペリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウム、アンモニウム及びスルホニウムからなる群から選択される少なくと
も一種のカチオン種である、第2観点に記載の発光性イオン結晶に関する。
第4観点として、前記発光性部位が、ナフタレン構造、アントラセン構造、テトラセン構造、ピレン構造、ペリレン構造、ビフェニル構造、ターフェニル構造、ペリレンジイミド構造、ナフタレンジイミド構造、又はBODIPY(ホウ素ジピロメタン)構造である、第1観点に記載の発光性イオン結晶に関する。
第5観点として、光を吸収して励起一重項状態となり、照射光より長波長の光を放出する、第1観点に記載の発光性イオン結晶に関する。
第6観点として、光を吸収して励起三重項状態となるドナー分子として機能する増感剤をさらに含み、前記発光性分子イオンが前記増感剤からの三重項エネルギー移動を受けて励起一重項状態となり発光する、第1観点に記載の発光性イオン結晶と増感剤とを含む発光体に関する。
第7観点として、前記増感剤が、ポルフィリン構造、フタロシアニン構造、フラーレン構造、又は2-フェニルピリジナト構造を含む化合物である、第6観点に記載の発光性イオン結晶と増感剤とを含む発光体に関する。
第8観点として、前記発光性分子イオンの分子間距離が3~20オングストロームである、第1観点に記載の発光性イオン結晶に関する。
第9観点として、前記増感剤と前記発光性分子イオンのモル比率が1:100~1:100,000である、第6観点に記載の発光性イオン結晶と増感剤とを含む発光体に関する。
第10観点として、第1観点乃至第5観点及び第8観点のうち何れか一項に記載の発光性イオン結晶又は第6観点、第7観点及び第9観点のうち何れか一項に記載の発光体を含み、照射光と異なる波長の光を発光する、フォトンコンバージョン発光体に関する。
第11観点として、第5観点に記載の発光性イオン結晶に光を照射し、該照射光のエネルギーよりも低いエネルギー光を発生させる、フォトンダウンコンバージョン方法に関する。
第12観点として、第6観点に記載の発光体に光を照射し、該照射光のエネルギーよりも高いエネルギー光を発生させる、フォトンアップコンバージョン方法に関する。
第13観点として、前記発光性分子イオンと、該発光性分子イオンの対イオンとを溶剤に溶解させたのち、結晶化させる工程を含む、第1観点乃至第5観点及び第8観点のうち何れか一項に記載の発光性イオン結晶又は第6観点、第7観点及び第9観点のうち何れか一項に記載の発光体の製造方法に関する。
第14観点として、発光性分子イオンと、該発光性分子イオンの対イオンを含むアモルファス状の会合体を溶剤に溶解させたのち、結晶化させることによる、発光効率の向上方法に関する。
第15観点として、発光性分子イオンに対し、該発光性分子イオンの対イオンを用いて前記発光性分子イオン同士の分子間距離を制御する方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、フォトンコンバージョン材料として「イオン結晶」の形態を採用することにより、精密な発色団間の配列制御を可能とするものである。それにより、従来課題とされた発光分子の凝集による消光を抑制することができ、発光効率が高く、発光特性制御が可能な発光体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)
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