TOP
|
特許
|
意匠
|
商標
特許ウォッチ
Twitter
他の特許を見る
公開番号
2025100535
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-07-03
出願番号
2025035335,2022505235
出願日
2025-03-06,2020-03-13
発明の名称
ピッチ収率を増加するための熱処理プロセス及びシステム
出願人
コッパーズ デラウェア インコーポレイテッド
代理人
個人
,
個人
,
個人
,
個人
主分類
C10C
1/19 20060101AFI20250626BHJP(石油,ガスまたはコークス工業;一酸化炭素を含有する工業ガス;燃料;潤滑剤;でい炭)
要約
【課題】石炭又は石油系ピッチのためのコールタール又はデカント油を使用したピッチ製造システムが開示される。
【解決手段】ピッチ製造プロセスからの蒸留留分を熱処理することによって全ピッチ製造収率が増加する。熱処理システム及びプロセスは、実施形態に開示されている。最も高い分子量を有する最も重い留出物を熱処理するが、他の実施形態は、様々な蒸留留分の組み合わせの熱処理を企図する。熱処理システムは、留出物を459~535℃の高温のほぼ一定の温度で、近似等流を用いてヒートソーキングすることを必要とする。熱処理留出物の留分を、連続プロセスの一部として、ピッチ製造システムに再導入してもよい。
【選択図】図2A
特許請求の範囲
【請求項1】
予め選択された出発原料からピッチを誘導する方法であって、
(i)石油系デカント油と(ii)コールタール系重質留出油とからなる群から出発原料を選択するステップと、
前記出発原料を、流動可能な液相中で、熱伝達を促進する伝導性材料で少なくとも部分的に構築された導管に導入するステップと、
前記出発原料を収容した前記導管の前記熱伝導性部分に、制御された方法で熱を適用し、前記出発原料の温度を、約3.2~20.7bar(g)(46~300psi(g))の圧力において459~535℃に上昇させるステップと、
前記導管の前記熱伝導性部分の少なくとも一部を通る前記出発原料の近似等流を、併合ストリーム中のメソフェーズ生成を0.7%以下に制限しながら前記出発原料の一部をピッチに変換するのに十分な時間にわたって、ほぼ一定の温度に維持するステップと、
前記併合ストリームの温度を275~385℃に低下させるステップと、
前記ピッチを前記併合ストリームから分離し、(i)前記石油系デカント油に関して少なくとも25%、及び(ii)前記コールタール系重質留出油に関して少なくとも15%、のピッチ収率を得るステップと、
を含む、方法。
続きを表示(約 820 文字)
【請求項2】
前記出発原料は、約3.2~10.7bar(g)(46~155psi(g))の範囲の圧力において475~510℃の範囲の温度に上昇されたコールタール系重質留出油である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、3.0~49.2分の範囲の時間にわたって発生する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ピッチ収率は、15~45%の範囲である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記温度は約475℃であり、前記圧力は約3.2bar(g)(約46.2psi(g))であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約49.2分間発生して、約45%のピッチを生じる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記温度は約510℃であり、前記圧力は約10.7bar(g)(約155psi(g))であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約3分間発生して、約15%のピッチを生じる、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記出発原料は、約4.2~8.7bar(g)(60.7~126psi(g))の範囲の圧力において、490~510℃の範囲の温度に上昇されたコールタール系重質留出油である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、4.3~23.6分の範囲の時間にわたって発生する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ピッチ収率は、20~40%である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記温度は約490℃であり、前記圧力は約4.2bar(g)(約60.7psi(g))であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約23.6分間発生して、約40%のピッチを生じる、請求項7に記載の方法。
(【請求項11】以降は省略されています)
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年7月23日に出願された、現在出願中の米国特許出願第16/520,135号の優先権を主張するものであり、その内容は全体が参照により本明細書に援用される。
本発明は、炭素系ピッチの製造における改善に関する。より具体的には、本発明は、ピッチ中のキノリン不溶分及びメソフェーズ生成を最小限に抑えながらピッチ収率を最適化するための、コールタール及び石油の処理からの蒸留副生成物の熱処理に関する。
続きを表示(約 8,400 文字)
【背景技術】
【0002】
石炭は、近代化した世界が頼るようになった多数の有益製品の製造においてきわめて重要な出発原料である。中でも特に、地面から採掘された瀝青炭は、「コークス炉」と呼ばれる炉内で加熱されて、石炭の分解蒸留又は炭化によってコークスとコールタールとを生成し得る。コークスは、燃料として、及び鋼製造における試薬源として、広く利用されている。コールタールは、コークス化プロセスで石炭から除去される暗色液体で、道路、アスファルト、屋根、処理木材及びその他の建設材料のシーリングに使用されるシールコートの成分として有用である。コールタールは、ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、フェノール、ナフタレン、ベンゾチオフェン、キノリン、メチルナフタレン、アセナフテン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、カルバゾール、フルオランテン、ピレン、テトラセン、トリフェニレン、クリセン、ベンゾ(a)ピレン(「BaP」)、コロネン及びベンゾ(ghi)ペリレンなどであるがこれらに限定されない、一般に50℃~550℃超の範囲の温度で沸騰する主に芳香族及び半芳香族の約10,000種の化合物の複雑な混合物である。従って、コールタールは、蒸留すると一連の留分となり、様々な構成成分が分離及び回収され、その各々が、それ自体で商業的に採算が取れる場合がある。蒸留されたコールタール材料のかなりの留分がコールタールピッチ残渣である。この材料は、アルミニウム精錬用のアノード、及び鉄鋼業で使用される電気アーク炉用の電極の製造に使用される。コールタールピッチの定性特性の評価において、産業界は、コールタールピッチ材料がアノード及び電極の製造プロセスでの使用に好適なバインダーを提供する能力に注目している。軟化点、比重、キノリン不溶分%、及びコークス値は、全て、これらの様々な製造プロセス及び産業への応用可能性について、コールタールピッチを特徴付ける役割を果たす。
ピッチは、石炭ではなく石油からも得られる。このような場合、デカント油又はエチレンクラッカーボトム(「ECB」)などの石油の接触分解から得られる油を、石油ピッチの製造の出発原料として使用できる。デカント油は、石油精製において石油の接触分解及び蒸留から製造される。デカント油は貯蔵安定性であり、高沸点を有し、更には芳香族化合物と複素環式化合物とを含む。ECBはデカント油よりも熱安定性が低いことから、その蒸留生成物は貯蔵中に爆発する可能性があり、あまり好ましくない。コールタール及び石油のピッチ製造プロセスは互いに似ている場合があり、同じ装置を使用することさえあるが、運転条件は異なる。あるいは、石油とコールタールのピッチ製造システムは、互いに異なる場合もある。更に、石油ピッチは、軟化点、キノリン不溶分(「QI」)%、又はコークス値に関して、コールタールピッチと比べて異なる特性を有し得る。多くの場合、原料材料不足、コスト及び最終生成物に望ましい特性に対処するために、特定の比の石油ピッチとコールタールピッチのブレンドが使用される。
【0003】
コールタール又は石油ピッチを製造する方法は多数存在する。例えば、図1Aは、そのようなプロセスの一実施形態を示す。この従来技術の蒸留プロセスは、湿潤粗製材料(wet crude)1の供給原料から始まる。湿潤粗製材料1は、コールタール、又はデカント油若しくはECBなどの石油系の油のいずれかであってもよい。湿潤粗製材料1は、C1供給ライン10を通して第1塔C1に導入され、当該ラインは、湿潤粗製材料1の出発原料を第1塔C1へ移送するパイプ又は導管である。C1供給ライン10は、第1塔C1の内部容積と比べて狭い場合があり、そのため湿潤粗製材料1は、C1供給ライン10内で高圧下にある。湿潤粗製材料1は、オリフィス11を通って第1塔C1に入るとき、「フラッシュ」又は圧力の急変を経験し、これにより構成部分が低沸点成分と高沸点成分に分離される。第1塔C1は、内容物を特定の温度で加熱して、軽質留分成分を除去する脱水容器である。あるいは、C1供給ライン10は、塔に入る前の湿潤粗製材料1の温度を上げるために熱交換器を通ってもよい。第1塔C1は主に、水を除去して、特定の含水量を超えない「乾燥タール」又は「乾燥油」(出発原料によって異なる)を塔のボトムに生じるために使用される。例えば、第1塔C1を約160℃の温度に加熱してC1留出物12を分別するために、スチームヒーターなどのヒーターを使用してもよく、当該留出物は、水蒸気と、比較的低沸点の軽質分子(例えば、水、一般に「BTX」と呼ばれるベンゼン、トルエン及びキシレンを含む軽油など)とを含む。上記のC1留出物12は、第1塔C1の頂部又は「オーバーヘッド」領域まで上昇し、C1蒸気ライン13を通して除去される。残りの、より重質の分子は、多環芳香族炭化水素(「PAH」)を含めて、塔のボトムまで下がる。「ボトム」は、質量及び高沸点の結果として、蒸留塔の底に分離する重質成分を有する留分を指す。従って、C1ボトムはPAHと他の重質分子とを含み、しばしば「乾燥タール/油」14と呼ばれる。
【0004】
C1ボトムからの乾燥タール/油14は、接続するC1~C2移送ライン15を通って第2塔C2へ移送され、更に蒸留される。従って、第1塔C1Aからの乾燥タール/油は、第2塔C2の供給原料である。第2塔C2は、多段蒸留を提供する分留塔である。多段を有する蒸留塔は、有用な化学物質の最適な回収及び純度をもたらす。蒸留塔は、塔の直径部分の少なくとも一部分に広がる複数のトレイ20を有し、当該トレイは蒸留凝縮物形成のための段として機能し、構成成分の還流において成分の更なる分離を助ける。蒸留塔は、不規則又は規則充填物21も含み、充填物を通って気化分子が上昇することで分離を助ける。塔の構造に関係なく、沸騰した蒸気は塔を上方へ進み、液体は重力によって下方に流れる。任意の段で、下方から入る蒸気は、下方に流れる液体よりも高温である。この蒸気と液体との対流接触は、蒸気から液体へ熱を伝達する。これは、液体中のより低沸点の軽質成分を気化し、蒸気中の重質成分を凝縮する。この軽質の気化と重質の凝縮が連続する段で起こることで、回収化学物質が分離及び精製される。
第2塔C2における蒸留は、典型的には、第2塔C2を、大気圧において、最低温度の約250~270℃から最高で360℃までヒーターで加熱することによって起こる。軽質留分22は、ナフタレン(それ自体で販売することも染料及びプラスチックの製造に使用することもできる)を含め、この段で除去されてもよく、更には210~315℃で留出する精製化学油(「RCO」)に濃縮されてもよい。軽質留分22は、蒸気ライン23を通して第2塔C2から除去される。軽質留分22の一部分は、還流のため第2塔C2に戻されて、更なる蒸留及び分離を達成する。第2塔C2から得られるC2ボトムは、一般に「抜頭タール/油」25と呼ばれ(これも出発原料に応じて異なる)、PAHなどの高分子量芳香族炭化水素を含有し、中間留分及び重質留分を構成する。
【0005】
C2ボトムからの抜頭タール/油25は、C2-C3移送ライン26を通して第2塔C2から第3塔C3へ移送される。抜頭タール、中間ピッチ又は軟ピッチを含む追加的なタール及びピッチは、軟ピッチ27として特徴づけられ、約40~125℃、好ましくは約90℃(最終ピッチの所望の最終軟化点に大いに依存するが)の軟化点を有し、追加の体積が必要である場合又は入ってくる供給原料の特徴を調節する場合に、C2-C3移送ライン26に追加されて、第3塔C3の追加の供給原料として抜頭タール/油25と一緒にされてもよい。この第3の蒸留塔C3は、充填物21及び/又はトレイを含有してもよく、その内容物は、ヒーターによって315℃を超える温度に加熱される。しかし、メソフェーズは390℃の温度で形成し始めることから、この段階で注意が必要である。メソフェーズはコークスの前駆体であり、生成したピッチ内で固体粒子として現れることとなる。しかし、用語「メソフェーズ」は、本明細書で使用するとき、4μmよりも大きい「報告できる」メソフェーズのみを指す。4μm以下の「未発達の」(embryonic)メソフェーズは、本開示の目的でメソフェーズとみなされない。ピッチ中のコークスは、アルミニウム製造用アノード作製及び製鋼用電極に使用したときにピッチの機能を低下し、アノード又は電極などの炭素人工物を作製するためにピッチが混合ステップでコークスを適切に湿潤する能力を制限し、得られる製品に導電性低下をもたらすことから、この特定の製造プロセスで避けるべきである。従って、構成成分が分離及び留出する沸点を下げるために、第3塔C3に真空を用いてもよい。
【0006】
様々な留分が第3塔C3から得られ、その各々が様々な成分の混合物である。例えば、第1中間留分35は最初に留出し、第3塔C3から留出物ライン36を通して除去され得る。第1中間留分35は、少なくとも12個の炭素を有し、従って高分子量を有する分子などの様々な炭素系分子の混合物である。上記分子はカーボンブラック供給原料(「CBF」)と呼ばれることもあり、ゴム産業の原材料を製造するためにカーボンブラック産業に販売される場合がある。第1中間留分35の一部分は、還流及び更なる分離のために第3塔C3に戻されてもよい。
第2中間留分38は、第3塔C3から留出物ライン39を通して除去され得る。第2中間留分38は、クレオソート木材防腐剤の製造に使用される化合物を含む場合があり、当該化合物は更なる精製及び他の用途での使用(枕木処理、電柱、その他の木材防腐剤用途など)のために残りの留出物から分離されてもよい。第2中間留分38の一部分は、還流及び更なる分離のために第3塔C3に戻され得る。
重質留分41は、更に高分子量の成分を含む。重質留分は、第3塔C3から蒸気ライン42を通って除去され得る。重質留分41は、連産物であり、カーボンブラック供給原料を含み得る。重質留分41の一部分は、還流及び更なる分離のために第3塔C3に戻され得る。
第3塔C3においてC3ボトム内に残るのは、コールタールピッチ50である。このピッチ50は、PAHなどの化学物質の混合物を含有する濃厚な黒色液体であり、上記のピッチ製造システムの所望の最終生成物である。ピッチは、ピッチ出口ライン51を通して第3塔C3から除去し、その後の用途に使用することができる。このピッチ50は、その品質及び様々な製造プロセス及び産業における適用可能性を判断するために、軟化点、比重、QI%、コークス値などの様々な品質で特徴付される。蒸留プロセスは、留出物の様々な留分が、異なる時間に及び/又は異なる体積で除去されるように調節することで、製造されるピッチ50に得られる特徴を所望に応じて選択的に変更し得る。例えば、約108~140℃のメトラー軟化点及び10~20%以下のQIを有するコールタールピッチ50を、アノード及び電極製造においてバインダーとして使用できる。含浸ピッチには、更に低いQIが必要になる。
【0007】
従来技術のピッチ製造の第2の実施形態では、図1Bに示すように、湿潤粗製材料1供給原料は、オリフィス11を通して第1塔C1内にフラッシングされ、脱水される。軽油及び水は、C1留出物12として除去され、乾燥タール/油14は、移送ライン15を通して第2塔C2へ移送される。
第2塔C2は、他の従来技術プロセスと同様に多段分留装置であり、大気圧において約250~270℃の温度までヒーターで加熱される。しかし、この実施形態では、軽質留分22は蒸気ライン23によって第2塔C2から留去され、中間留分38は留出物ライン39によって留去される。軽質留分22は、精製化学油(「RCO」)と、他の軽質蒸留油を含み得る。中間留分38は、クレオソートを含む場合あがり、これは更に分離及び精製されてもよい。軽質及び中間留分22、38を併合して一緒に保管してもよく、精製クレオソート製造のために後続処理を行ってもよい。
この実施形態では、C2ボトム中の抜頭タール/油25を、次いでC2-C4移送ライン26’を通して第4の(この実施形態では第3の)塔C4に移動させ、オリフィス11(スパージャーであってもよい)によって第4塔C4に導入又はフラッシングしてもよい。このフラッシングは、重油などの重質留分41を残りの残留物から分離し、重質留分41が蒸気ライン42によって第4塔C4から除去されるようにする。重質留分41の成分は、その後更なる蒸留又は処理によって分離され、カーボンブラックピッチ及び他の芳香族化合物を生じ得る。第4塔C4のボトムの残留物はピッチ50であり、これはコールタールで出発した場合はコールタールピッチであり得、デカント油から出発した場合は石油ピッチであり得る。
【0008】
従来技術のピッチ製造の第3の実施形態は、図1Cに示すように、ピッチ生成において残留物から油を蒸留及び/又は分離するために4つの塔を使用する。具体的には、湿潤粗製材料1は、最初に第1塔C1で脱水されて、水と軽油とを含むC1留出物12が除去される。次いで、乾燥タール/油14が蒸留装置の第2塔C2内で蒸留され、軽質留分22が除去される。得られた抜頭タール/油25は、次いで、別の蒸留装置の第3塔C3へ移送され、そこで中間留分38が除去される。この実施形態では、第3塔C3からの残留物は、フラッシュカラムである第4塔C4へ移送され、そこで急激な差圧により重質留分41を分離する。残りが、所望のピッチ50である。
【0009】
上記の従来技術のピッチ製造プロセスは、出発原料のコールタール及びデカント油のうちの1つから計算して、プロセスパラメータに応じて、15~60%のピッチ収率を生じ得る。プロセスの最適化及び生成物収率の増加は、重要であるが判定が難しく、商業的に販売できる品物を工業規模で生産することは、更に困難であることが判明している。
収率を最適化する方法の一つには、ピッチ製造において供給原料として使用する留出物及び副生成物の熱処理(温熱処理又はヒートソーキング(灼熱処理)とも呼ばれる)が挙げられる。熱処理プロセスは、温度、圧力、及び滞留時間の3つの主要パラメータを有することが認識されている。
ピッチ収率(及び他の特性)を熱処理の使用により改善する方法を特定するために多数の試みがなされてきたが、その能力は多種多様であり、商業的開発に必要な工業生産レベルで商業的に成功しているものはほとんどない。各引用文献は、幅広い時間と温度を開示しており、収率増加につながる機序はほとんど理解されておらず、特定の収率に関連する実際の時間と温度の開示は不十分である。
【0010】
米国特許第3,140,248号明細書は、ソーキングステップを用いたバインダーピッチの調製を開示している。200~650℃の沸点を有する石油留分を接触分解し、次いで熱分解する。熱分解から得られた熱残留物を、温度480~590℃の熱分解帯(soaking zone)で、4~20分、2.1~27.6bar(30~400psi)で処理する。コークス化を最小限に抑えるためには、短い滞留時間と高い線速度が好ましい。ソーキングコイルの使用が開示されているが詳細な説明はない。
米国特許第3,318,801号明細書は、熱ソーキングドラム及び短いチューブヒーターを開示している。熱ソーキングドラムは、温度340~425℃及び0~2.1bar(g)(0~30psi(g))で3~90分間使用される。加熱チューブは、1.7~17.2bar(g)(25~250psi(g))で425~510℃への2~30分間の急速加熱を誘導する。
米国特許第3,673,077号明細書は、トルエン不溶分(「TI」)を増加するためのバインダーピッチ製造用のヒートソーキングを開示している。条件は、350~450℃、圧力約5.2bar(g)(75psi(g))及び滞留時間15分~25時間である。任意選択的に空気が反応器を通過することも開示している。
米国特許第4,039,423号明細書は、石油ピッチを形成するためのデカント油の熱処理を開示している。条件には、413~524℃、15.2~30.3bar(g)(220~440psi(g))、滞留時間3~300分が含まれる。コークス生成を最小限に抑え、懸濁液中のQIを維持するためには、層流よりも乱流の連続流条件が好ましい。これはまた、材料の効率的混合を増し、反応時間を短縮する。生成物の軟化点は79~135℃の範囲である。
欧州特許出願公開第1739153号明細書は、不活性雰囲気下でのコールタール及び留出物の温熱処理の使用を開示している。条件は、340~400℃、10.0bar(g)(145psi(g))未満、及び3~10時間の滞留時間である。好ましい実施形態は、370~400℃、1.0bar(g)(14psi(g))、4~6時間である。不活性条件下での温熱処理は、分子の平面性及び反応生成物の安定性を増し、副反応を制限すると推測される。これは、湿潤性、黒鉛化性、及び反応収率を改善する。出発原料は、アントラセン油を含む。
米国特許第8,757,651号明細書は、ピッチ製造のための350~440℃、圧力3.5~8.3bar(g)(50~120psi(g))でのコールタール留出物の熱処理の使用を開示している。滞留時間は1~7時間の範囲である。出発原料は、低QIのクレオソート油である。熱処理は、比較的低分子量の成分を重合して、より大きな分子にできると推測される。生成物の下流蒸留は、異なる種を分離することが企図される。最終生成物は、55~70%のコークス値と90~140℃の軟化点とを有し得る。15%未満のQIも目標である。バッチ式と連続式の熱処理が企図されているが、反応器の詳細は示されていない。
米国特許第9,222,027号明細書は、高速及び高圧で作動する電気加熱式管型反応器を使用した熱処理を開示している。塩及び溶融金属浴も開示されている。条件は、450~560℃、34.5~62.1bar(g)(500~900psi(g))、滞留時間1~2分である。反応器のパイプ内の層流と乱流が扱われており、乱流が好ましい。乱流のレイノルズ数は、一般に4000超として受け入れられる。10000超のレイノルズ数が好ましく、25000で最も良い実験結果が得られる。50000超のレイノルズ数の使用の推測が示されているが、経験又は実験データはない。
米国特許出願公開第20170121834号明細書は、熱処理を利用した石油ピッチの製造を開示している。ソーカー反応器は、360~460℃の範囲、14.8~18.3bar(215-265psi)で、15分~5時間使用される。不活性環境、又は少なくとも酸素を含まないことが要求される。出発原料には、デカント油、潤滑剤抽出物、及びガソリンが含まれる。
これらの取り組みにもかかわらず、従来技術の解決策は商業的成功を達成していないことから、まだ改善の余地がある。従って、当該技術分野で依然として未知の事項は、コールタール及び石油副生成物に適用でき、商業規模の運転で予想可能かつ再現可能な結果を生じる熱処理の方法及び装置である。従来技術の適用に対する重大な制限としては、出発原料の連続処理を妨げる、熱処理後の過剰なコークス又はメソフェーズの生成がある。これは、典型的には、処理の過剰な適用、又は処理の時間及び温度の過剰な変動に起因する。バッチ式反応器の内容物の再循環を利用する従来技術の教示からは、再循環はピッチの品質に有害なものとして識別される。
【先行技術文献】
【特許文献】
(【0011】以降は省略されています)
この特許をJ-PlatPatで参照する
関連特許
三菱重工業株式会社
炭化炉
16日前
新日本理化株式会社
潤滑油
2日前
日本製鉄株式会社
処理装置、処理方法、およびプログラム
1日前
日本製鉄株式会社
処理装置、処理方法、およびプログラム
1日前
株式会社ZEエナジー
炭化装置および処理方法
1日前
株式会社ネオス
金属加工油剤、金属加工液、使用方法及び析出抑制方法
6日前
カナデビア株式会社
ガス化装置
今日
エスティーティー株式会社
潤滑塗膜用組成物及び潤滑塗膜
13日前
三菱ケミカル株式会社
潤滑油添加剤、潤滑油、及び潤滑油添加剤の製造方法
14日前
日油株式会社
樹脂用摺動性向上剤およびこれを用いた樹脂組成物
8日前
日本特殊陶業株式会社
濃度測定装置、反応装置および濃度測定方法
7日前
株式会社エムエスケイ
乾留熱分解油化システム、及び乾留熱分解油化方法
21日前
ディーエル ケミカル カンパニー リミテッド
潤滑油粘度指数改善剤及びそれを含む潤滑油組成物
14日前
三菱ケミカル株式会社
潤滑油添加剤、重合体、粘度指数向上剤、潤滑油及び潤滑油添加剤の製造方法
14日前
古河電気工業株式会社
有用炭化水素の製造方法および有用炭化水素の製造装置
6日前
サンライズソリューション株式会社
芳香族成分を多く含む油の燃焼性改善方法、及び内燃機関燃料の製造方法
14日前
インスティテュート・フォー・アドバンスド・エンジニアリング
熱分解原料及び生産品イメージ情報を用いた制御装置及び方法
21日前
シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
改良された改質プロセス
15日前
ENEOS株式会社
冷凍機油、冷凍機用作動流体組成物、潤滑方法及び冷凍機油の製造方法
13日前
アフトン・ケミカル・コーポレーション
潤滑剤用のケイ素含有化合物
15日前
コッパーズ デラウェア インコーポレイテッド
ピッチ収率を増加するための熱処理プロセス及びシステム
6日前
インフィニューム インターナショナル リミテッド
Ford6.7Lエンジン試験にてロバストなバルブトレイン摩耗保護を提供する潤滑剤組成
6日前
シータ ホールディングス ピーティーワイ リミテッド
炭素質材料を処理する方法およびそのための装置
6日前
シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
グリース組成物
今日
キヤノン株式会社
管理装置、制御方法、及びプログラム
9日前
株式会社タムラ製作所
遅延制御回路
14日前
株式会社日立製作所
コントローラー
今日
ZACROS株式会社
粘着剤組成物及び粘着フィルム
6日前
ローランドディー.ジー.株式会社
カラーチャート生成装置およびカラーチャート生成方法
9日前
ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
航空機の周囲の大気中のガス分子を特徴付けるための技術
20日前
イミュノジェン・インコーポレーテッド
マイタンシノールをアシル化する改善された方法
8日前
東ソー株式会社
重合体、その架橋物及びこれらを含む電子デバイス
7日前
三菱電機株式会社
回路シミュレーション装置及びMOS系トランジスタの出力特性モデル式生成方法
7日前
ハンファ トータルエナジーズ ペトロケミカル カンパニー リミテッド
新規な遷移金属化合物、それを含む遷移金属触媒組成物、およびそれを用いたエチレンとα-オレフィンの共重合体の製造方法
15日前
エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
有機金属化合物及び有機発光素子
16日前
株式会社山田養蜂場本社
化粧品組成物、浸透促進剤の使用、及び製造方法
13日前
続きを見る
他の特許を見る