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公開番号
2025145624
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-10-03
出願番号
2024045909
出願日
2024-03-22
発明の名称
緑藻コッコミクサ属の湿潤細胞から親油性有用物質を抽出する方法
出願人
学校法人 中央大学
代理人
弁理士法人平木国際特許事務所
主分類
C12P
7/64 20220101AFI20250926BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約
【課題】緑藻コッコミクサ属が合成する親油性有用物質を、簡便・安価・高効率に抽出する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】コッコミクサ属(Coccomyxa)に属する緑藻の細胞を50℃以上の温度で5分間以上熱処理する、前処理工程と、前処理工程で熱処理された前記細胞から、油脂等の親油性有用物質を有機溶媒を用いて抽出する、溶媒抽出工程とを含む、油脂等の親油性有用物質の抽出方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
コッコミクサ属(Coccomyxa)に属する緑藻の細胞を50℃以上の温度で5分間以上熱処理する、前処理工程と、
前処理工程で熱処理された前記細胞から、親油性有用物質を有機溶媒を用いて抽出する、溶媒抽出工程と、
を含む、親油性有用物質の抽出方法。
続きを表示(約 500 文字)
【請求項2】
溶媒抽出工程において、前処理工程で熱処理された細胞の含水量が、質量比で、前記細胞乾燥重量の1~100倍量である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
溶媒抽出工程において、有機溶媒の温度が40~85℃であり、且つ、抽出時間が5分以上である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
有機溶媒が、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ジエチルエーテル及びこれらの2以上の混合物から成る群より選択される極性溶媒である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
有機溶媒が、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ジエチルエーテル及びこれらの2以上の混合物から成る群より選択される極性溶媒と無極性溶媒との混合物である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
無極性溶媒が、ヘキサンである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
1回の溶媒抽出工程において使用する有機溶媒の量が、質量比で、前記細胞乾燥重量の5~100倍量である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
溶媒抽出工程を1回以上繰り返す、請求項1記載の方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑藻コッコミクサ属の湿潤細胞から、簡便・高効率に親油性有用物質を抽出する技術に関する。
続きを表示(約 2,700 文字)
【背景技術】
【0002】
微細藻類を用いた油脂生産と、その油脂を原料としたバイオ燃料製造が大きな注目を浴びてきたが、商業化の見通しは依然立っていない。その大きな理由として、培養から油脂抽出までの各工程において、多くの労力およびエネルギーの投入が必要であることが挙げられる。その結果、バイオ燃料の生産コストは非常に高いものになり、バイオ燃料製造時のCO
2
総排出量(ライフサイクルGHG排出量)が増加し、またエネルギー収支比[(バイオ燃料製造によって産出されるエネルギー)/(バイオ燃料製造に投入されるエネルギー)]も1を割ってしまう。
【0003】
緑藻を始めとした多くの微細藻類はトリグリセリドを主成分とする油脂を蓄積するが、この油脂をヘキサンなどの無極性溶媒で抽出する場合、抽出に先立ち藻バイオマスを乾燥させる必要がある。しかし、水を蒸発させるのに必要なエネルギー(蒸発熱)は莫大で、乾燥させることによって、バイオ燃料製造におけるエネルギー収支比が一挙に悪化してしまう。例えば、遠心機を用いて微細藻細胞を培養液から回収するとスラリー状のバイオマスが得られるが、そこに含まれる水の重量は概ね油脂重量の5倍以上である。この場合、このスラリーを乾燥させるのに必要なエネルギーは、その油脂の持つエネルギーの1/3以上と計算される。このような理由から、湿潤状態の藻類バイオマスからの油脂を抽出する研究が盛んに行われるようになってきた。
【0004】
油糧種子からの採油には搾油などの方法も用いられているが、微細藻類の細胞は固い細胞壁に覆われているため搾油は困難であり、他の方法、例えば有機溶媒を用いた油脂抽出等の開発が必要である。有機溶媒を用いた大豆油脂の抽出は、既に戦前に商業化されていた。一方、微細藻類からの有機溶媒抽出は開発段階に留まっている。有機溶媒による抽出以外の方法、例えば超臨界CO
2
やイオン液体(ionic liquid)による油脂抽出も提案されている。また、イオン液体に似た性質を持ち、イオン液体より安価な化合物である深共晶溶媒(deep-eutectic solvent)やスイッチング溶媒(switching solvent)を用いた油脂抽出の研究も開始されているが、実用化までの道のりは長い(非特許文献1)。
【0005】
油脂生産性の高い微細藻類の多くは緑藻類であるため、緑藻に含まれる油脂の有機溶媒抽出に関する論文は非常に多い。しかし、湿潤細胞からの油脂抽出効率は一般に低く、それは水を含んだ生体物質、特に細胞壁が有機溶媒の細胞内浸透を妨げているためと解釈されている。そしてこの障壁を除去するための処理(前処理)が必要であるとの認識が広まり、様々な前処理法が試みられてきた。代表的な前処理法としては、超音波破砕、マイクロ波照射、ホモジェナイザー破砕、凍結融解による破砕等の物理的な細胞破砕法が挙げられるが、破砕に際して大きなエネルギー投入が必要であり、設備投資も必要であるという問題を抱えている。一方、酵素による細胞壁脆弱化も研究されているが、酵素は高価で、単価が低いバイオ燃料製造には向いていない。そのため、化学的な前処理として、酸やアルカリ、界面活性剤等による細胞破砕も研究されているが、画期的な効果が見られない場合が多い(非特許文献2)。
【0006】
一方、ごく少数の論文において、前処理を伴わない、有機溶媒による油脂抽出法が報告されている。例えばYangらは、緑藻ピコクロラム(Picochlorum)の湿潤細胞に対して、エタノールを溶媒とした抽出を室温で行うことにより、油脂をほぼ100%回収できた(非特許文献3)。その後、同様の方法で、ピコクロラムのみならず、クロレラからも高効率で油脂を抽出できることが報告された(非特許文献4)。
【0007】
しかしながら、すべての緑藻にこの方法が適用できるわけではない。例えばセネデスムス(Scenedesmus almeriensis)からの油脂抽出では、エタノールで室温24時間抽出した時の抽出効率は20%程度であった(非特許文献5)。
【0008】
同様に、オーキセノクロレラ(Auxenochlorella protothecoides)からエタノール:ヘキサン(2.6:1)の混合溶媒を用いて油脂を一昼夜かけて抽出した場合、藻体乾燥重量の4% 以下の量しか抽出できなかった。一方、藻体を70℃で5分以上熱することにより、抽出できた油脂の量が藻体乾燥重量の35%程度に増加した。なおこの報告では、油脂抽出効率は算出されていないが、オーキセノクロレラの油脂含有率は最大50%程度であるので、油脂抽出効率は70%以上と考えられる(非特許文献6)。
【0009】
油脂の溶媒抽出効率が緑藻間で大きく異なる理由の一つとして、細胞壁の構造が異なることが考えられる。電子顕微鏡での細胞壁構造の解析(非特許文献7)や、細胞壁を構成する糖の解析(非特許文献8)から、クロレラ(Chlorella)属の細胞壁の構造は株ごとにまちまちであるという報告されてきた。ただ、2000年以前の論文においては緑藻の分類が不正確である場合が多く、クロレラ属と分類された株が他の属であった可能性は否定できない。緑藻の細胞壁の構造が属・種によってどのように異なっているのかについての系統的な研究が行われることが望まれているが、現状では、分類名から細胞壁の構造や有機溶媒を用いた油脂抽出の効率を予測することは困難である。
【0010】
緑藻は、油脂のみならず、カロテノイドを始めとした多くの有用物質を生産するが、それら有用物質を細胞破砕などの前処理無しに有機溶媒抽出すると、収率は非常に低かった(非特許文献9)。本発明者等は、緑藻コッコミクサ(Coccomyxa)属に属する2株、Obi株およびKJ株、による油脂やカロテノイド生産の研究に取り組んできた。しかしながら、これらの株の湿潤細胞から、細胞破砕処理無しに油脂やカロテノイドを高効率に抽出することは困難であった。例えば、クロロフォルムとメタノールの混合溶媒を用いるBligh & Dyer の方法(非特許文献10)は、生体材料から総脂質を抽出する最も一般的な方法であるが、この方法を用いてObi株の湿潤細胞から油脂抽出を試みたところ、全油脂の28.6 ± 9.0%しか抽出できなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
(【0011】以降は省略されています)
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