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公開番号2025146219
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-10-03
出願番号2024046883
出願日2024-03-22
発明の名称NADPHを補酵素とする酵素の高感度活性測定法
出願人国立大学法人群馬大学
代理人弁理士法人秀和特許事務所
主分類C12Q 1/32 20060101AFI20250926BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】本発明は、NADP酵素サイクリング法を利用し、特殊な施設や設備を必要とせず、研究室や臨床検査室で一般的に用いられる吸光度法を用いて、NADPHを補酵素とする酵素の活性を高感度に測定できる方法を提供することを課題とする。
【解決手段】試料中のNADPHを補酵素とする標的酵素の酵素活性を測定する方法であって、
(1)前記試料中における標的酵素に、前記標的酵素の基質及びNADPHを接触させて、NADPHを補酵素とする標的酵素の酵素反応を行うこと;
(2)過塩素酸を用いて、酵素反応後の反応液中の未反応NADPHを分解すること;
(3)カリウムを含む弱塩基を用いて、未反応NADPH分解後の溶液から過塩素酸を除去すること;
(4)過塩素酸を除去した溶液を用いて、NADP酵素サイクリング反応を行うことによりNADPを定量すること
を含む、方法。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
試料中のNADPHを補酵素とする標的酵素の酵素活性を測定する方法であって、
(1)前記試料中における標的酵素に、前記標的酵素の基質及びNADPHを接触させて、NADPHを補酵素とする標的酵素の酵素反応を行うこと;
(2)過塩素酸を用いて、酵素反応後の反応液中の未反応NADPHを分解すること;
(3)カリウムを含む弱塩基を用いて、未反応NADPH分解後の溶液から過塩素酸を除去
すること;
(4)過塩素酸を除去した溶液を用いて、NADP酵素サイクリング反応を行うことによりNADPを定量すること
を含む、方法。
続きを表示(約 830 文字)【請求項2】
前記標的酵素が、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)又はグルタミン酸デヒ
ドロゲナーゼ(GLDH)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
標的酵素がDPDであるとき、前記標的酵素の基質が5-フルオロウラシル(5-FU)若しく
はウラシルであり;又は、標的酵素がGLDHであるとき、前記標的酵素の基質がα-ケトグルタル酸である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記(2)において、前記酵素反応後の反応液中に添加される過塩素酸の終濃度が0.1M~1.2Mである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記(2)において、未反応NADPHの分解が、過塩素酸と5分間~2時間反応させること
により行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記(3)において、カリウムを含む弱塩基が、炭酸水素カリウム又は炭酸カリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記(3)において、前記未反応NADPH分解後の溶液中に添加されるカリウムを含む弱
塩基の終濃度が0.2M~2.4Mである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記(4)において、前記NADP酵素サイクリング反応がグルコース-6-リン酸デヒドロ
ゲナーゼ(G6PDH)を用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記試料が、血液試料又は末梢血単核球(PBMC)破砕液である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の方法を用いて、試料中のNADPHを補酵素とする標的
酵素の酵素活性を測定することを含む、試料中における標的酵素の存在量を変化させる疾患又は標的酵素の酵素活性に異常を生じる疾患の検査方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、NADPHを補酵素とする酵素の高感度活性測定法に関する。
続きを表示(約 4,100 文字)【背景技術】
【0002】
極微量の生体成分を検出するには、検出シグナルを増幅する必要がある。標的が核酸の場合は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて標的配列そのものを増幅することで高感
度検出が可能となる。また、標的を抗原とみなす免疫測定の場合は、抗体にペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼなどを標識することで、標的分子由来の検出シグナルを数千倍に増幅できる。しかし、生化学的研究や臨床検査などにおいて頻繁に利用される、生体試料中に含まれる酵素の活性測定において、検出シグナルを増幅する汎用的な手法はこれまでに報告されていない。そのため、微量の酵素の活性を測定する場合や、標的とする酵素の活性が著しく低い場合などは、活性測定が著しく困難となる。
【0003】
酵素サイクリング法は、低分子化合物を標的とした数少ない検出シグナルの増幅法である。代表的な酵素サイクリング法のターゲットとして、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)が挙げられる。NADP酵素サイクリング法は、酸化型(NADP
+
)を補
酵素とする反応と還元型(NADPH)を補酵素とする反応を組み合わせてNADP
+
とNADPHを相
互変換させ、その際に生じる電子を色素生成反応に利用するという一連の反応系から成っている。すなわち、NADP
+
/NADPHサイクリング反応が継続する限り、色素が蓄積されるた
め、大幅な感度上昇が見込まれるものである。従って、この酵素サイクリング法を、NADPH/NADP
+
を補酵素とする酵素(NADP酵素)の活性測定に応用できれば、わずかな酵素活性も高感度に測定できる手法に成り得ると考えられる。
しかし、この酵素サイクリング法をNADP酵素の活性測定に応用するには、非常に大きな問題点が存在する。一般的に、NADPHを補酵素とする酵素の活性測定法では、反応開始時
に過剰の基質およびNADPHを添加する。反応が進行すると生成物と共にNADP
+
が生成するが、この反応液には未反応のNADPHも残っており、酵素反応の前後でNADP
+
とNADPHの総和は変化しない。酵素サイクリング反応では、NADPHとNADP
+
のどちらも基質になるため、この酵素反応液を酵素サイクリング反応に導いても、酵素の活性が酵素サイクリング法の結果に反映されない。したがって、NADP酵素サイクリング法による酵素活性測定は容易ではなく、この問題点を解決する汎用的な手法は現在のところ開発されていない。
【0004】
また、本発明者は、酵素の活性測定方法についての開発を進めており、これまでにジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)の酵素活性を測定する方法を開発している(特
許文献1)。DPDは、がん化学療法に広く用いられている抗悪性腫瘍薬5-フルオロウラシ
ル(5-FU)を、5,6-ジヒドロ-5-フルオロウラシル(5-FUH2)に変換する酵素である。DPDは肝臓において当該5-FUの代謝を担っているが、DPD欠損症の場合には、5-FU投与後その
代謝不全のために5-FUの血中濃度が異常に高値となり、骨髄抑制をはじめとする致死的な副作用を誘発する。そのため、そのような副作用を避けるために5-FUの投与前にDPD活性
を測定することが求められる。
ここで、DPDには、NADPHを補酵素として5-FUを5-FUH2に変換する順反応と、NADP
+
を補
酵素として5-FUH2を5-FUに変換する逆反応が存在する。特許文献1におけるDPDの酵素活
性を測定する方法は、NADP
+
を補酵素とするDPDの逆反応により生じる5-FUを高速液体クロマトグラフ法(HPLC)で分離した後、吸光度検出することでDPD活性を測定するものであ
る。しかしながら、研究室や臨床検査室で広く用いるためにはより簡便な方法によって酵素活性を測定することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2021-153494号公報
【非特許文献】
【0006】
分析化学、2006;55(1):45-49
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、NADP酵素サイクリング法を利用し、特殊な施設や設備を必要とせず、研究室や臨床検査室で一般的に用いられる吸光度法を用いて、NADPHを補酵素とする酵素の活性
を高感度に測定できる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、NADPHを補酵素
とする酵素の活性測定に際し、補酵素NADPHの反応後に、未反応のNADPHを過塩素酸により除去し、さらにその後余分な過塩素酸をカリウムを含む弱塩基により除去することにより、酵素反応により生成したNADP
+
のみを酵素サイクリング反応に利用することができることを見出した。これにより、酵素量が少ない場合や酵素活性が低い場合など活性測定が困難な状況においても、好感度に酵素の活性を測定できる手法を見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]試料中のNADPHを補酵素とする標的酵素の酵素活性を測定する方法であって、
(1)前記試料中における標的酵素に、前記標的酵素の基質及びNADPHを接触させて、NADPHを補酵素とする標的酵素の酵素反応を行うこと;
(2)過塩素酸を用いて、酵素反応後の反応液中の未反応NADPHを分解すること;
(3)カリウムを含む弱塩基を用いて、未反応NADPH分解後の溶液から過塩素酸を除去
すること;
(4)過塩素酸を除去した溶液を用いて、NADP酵素サイクリング反応を行うことによりNADPを定量すること
を含む、方法。
[2]前記標的酵素が、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)又はグルタミン酸
デヒドロゲナーゼ(GLDH)である、[1]に記載の方法。
[3]標的酵素がDPDであるとき、前記標的酵素の基質が5-フルオロウラシル(5-FU)若
しくはウラシルであり;又は、標的酵素がGLDHであるとき、前記標的酵素の基質がα-ケトグルタル酸である、[2]に記載の方法。
[4]前記(2)において、前記酵素反応後の反応液中に添加される過塩素酸の終濃度が0.1M~1.2Mである、[1]~[3]の何れかに記載の方法。
[5]前記(2)において、未反応NADPHの分解が、過塩素酸と5分間~2時間反応させる
ことにより行われる、[1]~[4]の何れかに記載の方法。
[6]前記(3)において、カリウムを含む弱塩基が、炭酸水素カリウム又は炭酸カリウムである、[1]~[5]の何れかに記載の方法。
[7]前記(3)において、前記未反応NADPH分解後の溶液中に添加されるカリウムを含
む弱塩基の終濃度が0.2M~2.4Mである、[1]~[6]の何れかに記載の方法。
[8]前記(4)において、前記NADP酵素サイクリング反応がグルコース-6-リン酸デヒ
ドロゲナーゼ(G6PDH)を用いて行われる、[1]~[7]の何れかに記載の方法。
[9]前記試料が、血液試料又は末梢血単核球(PBMC)破砕液である、[1]~[8]の何れかに記載の方法。
[10][1]~[9]の何れかに記載の方法を用いて、試料中のNADPHを補酵素とする
標的酵素の酵素活性を測定することを含む、試料中における標的酵素の存在量を変化させ
る疾患又は標的酵素の酵素活性に異常を生じる疾患の検査方法。
[11]NADPHを補酵素とする標的酵素の酵素活性を測定するための、及び/又は試料中
における標的酵素の存在量を変化させる疾患若しくは標的酵素の酵素活性に異常を生じる疾患の検査するためのキットであって、
NADPH、前記標的酵素の基質、過塩素酸、カリウムを含む弱塩基、NADP酵素サイクリング
用試薬を含む、キット。
[12]標的酵素がDPDであるとき、前記標的酵素の基質が5-フルオロウラシル(5-FU)
若しくはウラシルであり;又は、標的酵素がGLDHであるとき、前記標的酵素の基質がα-ケトグルタル酸である、[11]に記載のキット。
[13]前記カリウムを含む弱塩基が、炭酸水素カリウム又は炭酸カリウムである、[11]または[12]に記載のキット。
[14]前記NADP酵素サイクリング用試薬が、グルコース-6-リン酸(G6P);グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH);1-メトキシフェナジンメトサルフェート(1-Methoxy PMS)、5-メチルフェナジニウムメチルサルフェート(PMS)、又はジアホラーゼ;及びジアゾニウム塩を含む、[11]~[13]の何れかに記載のキット。
【発明の効果】
【0010】
本発明によりNADPHを補酵素とする酵素活性を高感度に測定することができる。これに
より、これまで発見されなかった生命現象の発見のための新たな研究ツールとしての利用や新たな疾病診断法としての利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)

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