発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、大気中の二酸化炭素を直接回収し、水の電気分解により生成される水素を使用して二酸化炭素を燃料及び化学物質へと変換することにより、再生可能電気、空気及び水を、低炭素又はゼロ炭素で燃料及び化学物質へと変換するための方法、触媒、材料に関するものである。 続きを表示(約 3,800 文字)【背景技術】 【0002】 二酸化炭素は、工業的及び生物学的な多くのプロセスにより生成される。二酸化炭素は、通常、大気中へと排出され、産業革命の開始以来、地球上の大気中の二酸化炭素濃度は上昇し続けている。二酸化炭素は、地球規模の気候変動の原因となる著しい温室効果ガスとして認識されている。特に、二酸化炭素の発生源での削減は難しく、一般的に成功していない。大気中の二酸化炭素は増え続けている。二酸化炭素に対処するさらに好ましいプロセスは、二酸化炭素を、大気中の空気から効率的に回収して有用な生成物へと変換し、例えば燃料(ディーゼル燃料、灯油、ジェット燃料、ガソリン若しくはガソリン混合燃料、又は他の燃料)及び化学物質(メタノール、アンモニア、溶剤、ワックス、オレフィン、又は他の化学物質)等のように例えば石油及び天然ガス等の化石資源から生成される燃料及び化学物質と置き換えることができ、その結果として、大気中への二酸化炭素の正味の総排出量を低くすることである。これが、低炭素、超低炭素又はゼロ炭素の燃料及び化学物質が意味するものである。 【0003】 二酸化炭素は、幾つかの供給源から得ることができる。天然ガス又は石炭から肥料用のアンモニアを生成する産業に関する製造工場では、大量の二酸化炭素を生成する。トウモロコシ又は小麦をエタノールへと変換するエタノール工場では、大量の二酸化炭素を生成する。天然ガス又は石炭から発電する発電所では、大量の二酸化炭素を生成する。天然ガス鉱床はまた大量の二酸化炭素を含み得るため、幾つかの場所において、天然ガス処理工場ではかなり大量の二酸化炭素を処理する必要がある。CO 2 を回収して利用するには、排気ガスの流れ(a flue gas stream)又は二酸化炭素が主成分ではない別の流れから、二酸化炭素の分離を要することが多い。排気ガスの蒸気(the flue gas steam)から二酸化炭素を除去するために、アルキルアミンが用いられる。このプロセスで使用されるアルキルアミンには、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジイソプロピルアミン、アミノエトキシエタノール、又はそれらの組み合わせが含まれる。金属有機構造体(Metal Organic Framework:MOF)材料はまた、化学吸着又は物理吸着を用いて二酸化炭素を低濃度の流れから分離し、この流れから二酸化炭素を回収する手段として用いられてきた。高濃度の二酸化炭素を得る他のプロセスには、燃焼プロセスの間に生成した二酸化炭素を、循環している金属酸化物材料(circulating metal oxide material)に回収させる、化学ループ燃焼が含まれる。 【0004】 二酸化炭素はまた大気から回収することができ、二酸化炭素の直接空気回収(direct air capture:DAC)と呼ばれる。空気中の二酸化炭素濃度は約415ppmとかなり低いので、空気から二酸化炭素を回収することの課題は、排気ガス又は他の供給源からの回収とは異なっている。このような低濃度では、液体のアルキルアミンはアミン損失が大きくなりすぎる場合が多いため、うまく機能しない。MOF化合物は、二酸化炭素の物理的吸収に基づき、通常、二酸化炭素の取り込み量が少なすぎる。出版物、Sanz-Perez, et al, "Direct Capture of CO 2 fromAmbient Air", Chem. Rev. 2016, 116, 11840-11876では、CO 2 の直接空気回収について歴史的な発展が詳述されている。二酸化炭素を低濃度の空気流から回収するために、数多くの材料が試みられてきた。 【0005】 過去10年間で最も有望なものとして、2つの主要なタイプの材料及びプロセスが発展してきた。第1の有望な材料及びプロセスのセットは、アミンを繋ぎとめた固体吸着剤の使用である。これは、(先に述べた液体アミンと同様に)アミンのCO 2 回収能力を利用したものであるが、これらのタイプの材料は化学的に固体に繋ぎとめられる。先に述べた金属酸化物に基づく化学吸着剤とは異なり、担持されたアミン吸着剤は、ほぼ大気下の条件で作動し、理想的には穏やかな温度変化で再生させることが可能である。Choi et al, "Application of Amine-Tethered Solid Sorbents forDirect CO 2 Capture from Ambient Air", Environmental Science& Technology, 2011, 45, 2420-2427では、これらの材料について詳しく説明されている。しかし、これらの化学吸着剤には、二酸化炭素を放出するための温度変化と、二酸化炭素を洗い流すための不活性ガスとが必要である。実験室では、窒素又はアルゴン又は他の不活性ガスが用いられている。しかし、商業的には、二酸化炭素からの不活性ガスの分離が、二酸化炭素の最初の回収とほとんど同じくらい重要な問題となる。この不活性ガスの問題を克服するために、ある種のこれら担持された吸着剤では、水蒸気を用いて二酸化炭素を放出させ、吸着剤を再生可能なことが示されている。Wen Li, et.Al "Steam Stripping for Regeneration of SupportedAmine-Based CO2 Adsorbents", ChemSusChem 2010, 3, 899-903を参照されたい。US9,555,365で説明されているように、Global Thermostatにより開発された技術は、DACのためのこの一般的なアプローチの部類に入る。 【0006】 第2の材料及びプロセスは、水性(aqueous)の金属水酸化物を用いて空気中のCO 2 と反応させて金属炭酸塩を生成し、これをか焼して回収したCO 2 を放出し、金属水酸化物を再び作るものである。このサイクルは、連続した一連の化学反応器内で行うことができる。この技術は、Carbon Engineeringにより高められている。彼らのプロセスは、Keithet al, "A Process for the Capture of CO 2 from theAtmosphere", Joule 2, 1573-1594, August 15, 2018で詳細に説明されている。彼らのプロセスから結果として得られる二酸化炭素は、900℃から冷却され、100気圧よりも高圧に圧縮されて、地質的に隔離される又はCO 2 パイプラインへと送られる。再生可能な水素(H 2 )源は、水から電気分解で生成することができる。 【0007】 JPEG 2025106343000002.jpg 12 170 【0008】 この反応は、電気を用いて、水を、水素と酸素とに分解するものである。電解槽は、電解質で隔てられたアノードとカソードとで構成されている。方法が少し異なると電解槽の機能が様々に異なり、これは主に、要する電解質材料の種類の違いによるものである。 【0009】 しかし、それぞれの電気分解技術は、水が常圧及び常温でシステムへ供給され、全てのエネルギー入力が電気の形で提供される場合、39.4kWh/kgH 2 (水素のHHV)の電気エネルギー入力の理論的最小値を有する。適切な熱エネルギーがシステムへ供給されれば、必要な電気エネルギー入力は、39.4kWh/kgH 2 よりも少なくなる可能性がある。例えばPEM水蒸気電気分解や特に固体酸化物電気分解等の高温電解では、電解槽が低コスト熱源又は廃熱源と同位置にあれば、全てのエネルギーを電気で供給する場合よりも作動コストを低くすることができる。(Study on development of water electrolysis in the EU Final Report,E4tech Sari with Element Energy Ltd for the Fuel Cells and Hydrogen JointUndertaking, February 2014)。電気分解に必要な高いエネルギーを考慮すると、本発明により想定するゼロ炭素の燃料及び化学工場の配置は、安価な再生可能電力がある場所又はその近辺に配置する必要がある。 【0010】 電気分解の他に、現在の重要な研究では、光エネルギー及び光触媒を用いて、水を、水素と酸素とへ分解する方法が検討されている。(Acar et al, Int. J. Energy Res. 2016; 40: 1449-1473)。 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPatで参照する