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公開番号2025120896
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-08-18
出願番号2024026982
出願日2024-02-05
発明の名称水底地盤の天地返し工法と専用作業船
出願人個人
代理人
主分類E02D 3/12 20060101AFI20250808BHJP(水工;基礎;土砂の移送)
要約【課題】日本の沿岸水域にはヘドロ化した海底が広く分布している。ヘドロ化水域はCO2の放出域である。一方で、藻場が見られる沿岸水域はCO2の吸収域である。ヘドロ化水域を植生水域に変えることができたならば、気候変動対策に大きく寄与することになる。藻場を造成するには底質改良が必要であるが、環境と費用対効果が大きな課題となっている。
【解決手段】本発明の天地返し工法は大規模底質改良工法として開発された。本工法は専用作業船に搭載され天地返しバケットを用いて、バケットに取り込んだ水底土砂を180度縦回転させて表層のヘドロ層を下層に、良質土層を表層とする。本工法は浚渫工法のようにヘドロを工区外への搬出が不要であり、覆土工法のように、覆土材を工区外からの搬入が不要である。本発明は従来の底質改良工法の主要な工程を不要とし、工事費を大幅に低廉化することで、気候変動対策における環境と費用対効果の両立を可能とした。
【選択図】図5
特許請求の範囲【請求項1】
底質改良を必要とする水底地盤の天地返し工法に使用する専用作業船において、当該専用作業船の主な構成体は上面と底面が解放された箱型の天地返しバケットと外周土留バケットと前記両バケットに被せるものであるが自動連結機能と打設機能があるバケット蓋とこれらが昇降する開口空間のある台船及び作業船移動装置からなり、天地返しの方法は、天地返しバケットと外周土留バケットとバケット蓋を組合わせて連結し、バケット蓋で両バケットを水底地盤に振動打設するものであり、外周土留バケットは浚渫対象の水底地盤を土留め状態にし、この間にバケット蓋は上方に移動させ、天地返しバケットは水底土砂を取り込んで、水底面より上で180度縦回転させてから水底地盤の元の位置に埋め戻すことで、水底地盤の表層の不良土層と下層の良土層とを入れ替えることを特徴とする水底地盤の天地返し工法に使用する専用作業船。
続きを表示(約 2,300 文字)【請求項2】
請求項1の専用作業船において、当該専用作業船の外周土留めバケットは上面と底面が解放された長方形箱型のバケットで、このバケットの高さは天地返しバケットの高さよりも根入れ分高いものであるが、このバケットの左右の外壁の一部がさらに高くなる複数の突出した外壁があり、これの内側には天地返しバケット及びバケット蓋の鉛直ガイドが取付けられたものであり、このような外周土留めバケットを搭載していることを特徴とする水底地盤の天地返し工法に使用する専用作業船。
【請求項3】
請求項1の専用作業船において、当該専用作業船の天地返しバケットは長方形箱型のバケットで、前記外周土留めバケットに丁度収まる大きさであり、上面と底面が解放され、内部は隔壁で分割された分割バケットを形成するものであり、また、天地返しバケットの前後の外壁の外側にはこのバケットの短辺の鉛直断面の図心と同一図心とする大型円形軸がそれぞれ固定され、この大型円形軸は二つの部分に分かれて機能するもので、内側部分は大型円形軸とは回転自由な角形のフランジがはめ込まれ、フランジの両端にはバケットを吊るロープの吊り具があり、外側部分はバケットの回転を操作するロープが取付けられる部分であり、また、天地返しバケットの左右の外壁の外側には外周土留めバケットの複数の鉛直ガイドに組み込まれる複数のガイド受けが取付けられているものであり、このような天地返しバケットを搭載していることを特徴とする水底地盤の天地返し工法に使用する専用作業船。
【請求項4】
請求項1の専用作業船において、当該専用作業船の天地返しバケットは長方形箱型のバケットで、前記外周土留めバケットに丁度収まる大きさであり、上面と底面が解放され、内部は隔壁で分割された分割バケットを形成し、また、天地返しバケットの外部壁底部の内側、及び隔壁底部の両側には開閉する小型底版が90度の制限のあるヒンジで結合され、この小型底版は通常では90度の水平状態にあり、天地返しバケットが水底地盤に打設される時は、地盤反力で容易に押し上げられて鉛直状態に、天地返しバケットを引き上げる時はバケットに取り込んだ水底土砂の重量で容易に水平状態に戻るもので、このような小型底版が取付けられた天地返しバケットを搭載していることを特徴とする水底地盤の天地返し工法に使用する専用作業船。
【請求項5】
請求項1の専用作業船において、当該専用作業船のバケット蓋はスクリーン機能のある剛性蓋であり、これの上面には複数の水中振動装置が設置され、また下面には天地返しバケットの内部を隔壁で分割した分割バケットの内部空間に合わせた凸部が形成され、且つ凸部には圧力センサーが取付けられ、またバケット蓋の左右側面には複数の自動連結装置が固定され、さらに外周土留めバケットに取り付けられている複数の鉛直ガイドに組み込まれる複数のガイド受けが取付けられているものであり、このようなバケット蓋を搭載していることを特徴とする水底地盤の天地返し工法に使用する専用作業船。
【請求項6】
請求項1の専用作業船において、当該専用作業船の作業船移動装置は台船の端部に設置され、この装置は二段梁の門型構造であり、柱がスパッドで梁が複動式シリンダに相当し、上下段の梁となるシリンダは台船に固定され、柱となるスパッドは台船と分離されるが、スパッドは上下段のシリンダのロッドとヒンジ結合することにより、構造的には柱,梁部材の軽量化が図れること、また、台船の移動時にスパッド先端部に加わる水平地盤反力が有利に作用することであり、機能的には2本のスパッドと台船の距離を容易に調整できることから台船の移動距離を正確にできること、スパッド機能により波浪に対する作業の安定性が高いことを特徴とする作業船移動装置を装備した水底地盤の天地返し工法に使用する専用作業船。
【請求項7】
請求項1の工法において、当該工法の天地返しバケットのバケット蓋はこれの底面に圧力センサーを取り付けたものを使用するものであり、当該工法の作業工程は、まず、台船の
開口空間
において、外周土留めバケット,天地返しバケット,バケット蓋の順に組合わせ状態にして連結し、次に、組合わせたバケットを水底面まで降下させ、次に水底面にバケット蓋が届くまで水底地盤に振動打設するものであるが、併せて、天地返しバケットに取り込まれた水底土砂の打設時の地盤反力値が所定値に達するのを圧力センサーで確認できるまで振動打設を継続するものであり、次に、外周土留バケットで水底地盤を土留め状態としている間に、バケット蓋を引き上げ、続いて水底土砂を保持した天地返しバケットを水底面より上に引き上げ、天地返しバケットを180度縦回転させてから元の水底地盤の位置まで降下させ、振動を加えながら引き上げて水底土砂を埋め戻すことで、水底地盤の表層の不良土層と下層の良土層とを入れ替えたならば、専用作業船を隣接の天地返し位置に作業船移動装置で移動して天地返しを繰り返すことを特徴とする水底地盤の天地返し工法。
【請求項8】
表層が極めて不良土層の場合の請求項1の天地返し工法において、当該工法は天地返し工法に先行して水底面に鉄鋼スラグを散布してから天地返し工法を行うもので、これにより天地返し施工時、及び天地返し後の長期に渡る不良土からの海水への化学成分の溶出抑制を図ることによりさらに高度となる底質改良を特徴とする水底地盤の天地返し工法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は沿岸水域の底質改良を必要とする水底地盤の天地返し工法とこれに使用する専用作業船に関する。
続きを表示(約 2,900 文字)【背景技術】
【0002】
海洋は地球の表面積の4分の3を占め、地球の水の97%を蓄え、体積で地球上の生息空間の99%を占めている。海洋は、人間が作り出した二酸化炭素の約30%を吸収し、地球温暖化の影響を和らげてきた。しかし、日本の高度経済成長期の沿岸水域では広大な埋立土地造成が行われ、経済産業活動を集約化して高度経済成長をもたらした。その代償として広大な浅海域を失った。そこには広い干潟・藻場があった。沿岸域の生態系が崩れ、本来の自然環境が失われた。人口の都市集中化に下水整備が追い付かないこともあって、沿岸水域は陸域からの有機物及び栄養塩の流入負荷などにより劣化し、ヘドロ化した海底が広く分布して負の遺産となっている。
【0003】
沿岸水域の藻場は多くの水生生物の生活を支え、産卵や幼稚仔魚に育成の場を提供している。また水中の有機物を分解し、栄養塩類や二酸化炭素を吸収して酸素を供給するなどの海水浄化に大きな役割を果たしている。藻場等に生息する海洋植物に二酸化炭素として取り込まれた炭素は「ブルーカーボン」と呼ばれる。しかし、劣化して有機汚濁した沿岸水域は二酸化炭素の吸収域ではなく放出域となっている。本来の沿岸水域は二酸化炭素の吸収域である。
【0004】
最近の都市内湾域の生物活動による二酸化炭素吸収メカニズムの研究では、日本の内湾は沿岸水域としては世界でも有数の二酸化炭素の吸収域であることが明らかとなった。これの主要な要因は湾内に流入する適度の栄養塩を含んだ下水処理水が活発な海洋生物活動を促進していた。すなわち、都市化に対応した下水処理により、有機物を効果的に除去する一方、適度の栄養塩濃度を保つことが炭素循環を通じた将来の気候変動対策の一つになりうるとのことである。
【0005】
しかし、一方で日本の内湾に広く分布する負の遺産であるヘドロの海底は水環境に連綿と悪影響を与え続けているようである。東京都の運河部・内湾部における底質の長期変動傾向の解析によると、富栄養化により大量に発生した赤潮プランクトンは、やがて死んで沈降し、いわゆるヘドロとなって海底に堆積する。暖候期にはバクテリアがヘドロ中の有機物を活発に分解し、その過程で水中の溶存酸素が大量に消費されて底層水が貧酸素化する。その結果、海底に生息する底生生物が死滅して生物による浄化作用が失われ、その遺骸は、新たな汚染の原因になる。また、貧酸素化により、リン等の栄養塩がヘドロから海水中に溶出して赤潮プランクトンの増殖が助長される。このように水質、底質の悪化が、生物浄化作用の低下と汚濁負荷の増大を引き起こし、それによって水質、底質が更に悪化するという一連の負のスパイラルから抜け出せないことが東京湾の水環境がなかなか改善しない原因と考えられている。こうした連鎖を水質・底質改善→生物浄化作用の強化→水質・底質改善という正のスパイラルに変えることができれば、水環境が急激に改善する可能性があるとのことである。すなわち、日本の内湾はまだまだ高度の二酸化炭素の吸収域に高められる可能性があるとのことである。
【0006】
日本の内湾に限らず、沿岸水域を高度の二酸化炭素の吸収域とするために、最優先すべきことは底質改善である。底質改善の方法として、現在なされているのは底泥の浚渫工と覆砂工がある。一番の課題は環境と費用対効果の問題がある。十分な底質改善事業費の確保の難しさがある。また、浚渫された底泥の最終処分場が困窮している。また、覆砂の良質な砂材は、航路等の浚渫土砂の活用が進められているが、都合良くマッチングするとは限らない。環境に配慮しつつ費用対効果を最適化する。すなわち、環境とコスト削減の両立が求められている。
【0007】
今日、地球温暖化による気候変動は、脱炭素社会を待ったなしで要請している。SDGsの目標13は気候変動に具体的な対策を、目標14は海の豊かさを守ろうである。藻場には二酸化炭素の削減、水質浄化の効果、水産物への貢献が確認されている。ここにブルーカーボンによる多様な効果が注目され、いろいろな取り組みが行われて成果を上げている。1例として、藻場造成に製鉄工程から発生する鉄鋼スラグの活用がある。これは藻が岩などにくっ付いて成長する着生気質に対処するものであり、また鉄鋼スラグは酸化カルシウムを多く含み水質の改善に効果がある。同様の効果としてホタテの酸化カルシウムは水に溶けやすい性質から、ホタテ貝殻の活用がある。さらに、両方を混合利用するという新たな試みも進められている。
【0008】
海上工事は海洋汚染防止法に関連して、汚濁拡散防止対策を実施する必要がある。土運船で運搬された土砂類を海底に投入する際に、汚濁拡散の主な原因は土砂類の水中落下である。これを直接落下させない汚濁拡散防止方法がある。その方法として、二重管トレミー管を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。同様に、土砂を積載した土運船が潜水して所定の海底面で反転して土砂降ろしを行い、空となった土運船は水面まで自動的に浮上する工法がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
特許第5393376号
特願2023-139354
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
日本の沿岸水域にはヘドロ化した海底が広く分布している。ヘドロ化水域は二酸化炭素の放出域である。一方で、海草場,海藻場のような植生が見られる沿岸水域は二酸化炭素の吸収域である。ヘドロ化沿岸水域を植生沿岸水域に変えることができたならば、気候変動対策に大きく寄与することになる。このヘドロの海底を海草場,海藻場に造成するには底質改良が必要である。現行の底質改良方法は底泥の浚渫工と覆砂工がある。気候変動対策を意図した底質改良は大規模事業となる。持続可能な事業とするためには、環境を考慮しつつ費用対効果を考える必要がある。現行の工法による大規模事業において、底泥の浚渫工法は最終処分場の困窮がある。覆砂工法は。航路等の良質な浚渫土砂は上手くマッチングすれば活用すれば良い。しかし、上手くいかなければ事業が停滞する。従って、大量の良質な浚渫土の入手を前提とする覆土工法は必ずしも良策とはいえない。いずれにせよ、大規模事業のスケールメリットをどうのように生かして費用対効果を高めるかが大きな課題である。本発明の課題は気候変動対策事業をいかにして、持続可能な事業とするかである。本発明の基本的課題は、スケールメリットを生かし、新技術で底質改良の工事費を大幅に低廉化し、気候変動対策の事業費の大幅な縮減化を図ることである。また、海上工事として、汚濁拡散防止となっている新技術が必要である。
【発明が解決しようとする手段】
(【0011】以降は省略されています)

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