発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、イオントラップ装置と、当該イオントラップ装置を備えるイオントラップシステムに関する。 続きを表示(約 2,100 文字)【背景技術】 【0002】 近年、多くの量子技術の中で、高い量子操作精度、均質性、及び光接続の実現可能性から、量子計算と量子通信の双方に有望なプラットフォームとしてイオントラップ量子技術が注目されている。イオントラップ量子技術は、極高真空中で電磁場により原子イオンを浮遊させ、レーザ、マイクロ波等の電磁波により原子イオンの量子状態を制御するものである。 【0003】 従来のイオントラップ量子技術では、多数の光学素子を除振台の上に固定した自由空間光学系が用いられていた。イオントラップ量子技術のモジュール化と多数の量子ノードの接続を実現させるため、近年、従来の自由空間光学系を、小さなチップ上の光学素子からなる光回路で置き換え、光回路とイオントラップとを一体化させた技術が提案されている。 【0004】 例えば、非特許文献1には、イオントラップのための基板電極(以下、「トラップチップ」と呼ぶ。)に窓穴を設け、トラップチップ直下にグレーティング等の光出射素子を実装し、トラップチップによって捕獲された原子イオンに向けて光出射素子から窓穴を介してレーザを照射することが開示されている。非特許文献2には、トラップチップに設けた比較的大きな窓穴に原子イオンの量子状態を測定するための超伝導細線単一光子検出器(superconducting nanowire single-photon detector(SNSPD))を配置し、基板全体を低温に冷却させて動作させる技術が開示されている。 【先行技術文献】 【非特許文献】 【0005】 R. J. Niffenegger, J. Stuart, C. Sorace-Agaskar, D. Kharas, S. Bramhavar, C. D. Bruzewicz, W. Loh, R. T. Maxson, R. McConnell, D. Reens, G. N. West, J. M. Sage, and J. Chiaverini, “Integrated multi-wavelength control of an ion qubit,” Nature volume 586, pp.538-542 (2020). S. L. Todaro, V. B. Verma, K. C. McCormick, D. T. C. Allcock, R. P. Mirin, D. J. Wineland, S. W. Nam, A. C. Wilson, D. Leibfried, and D. H. Slichter, “State Readout of a Trapped Ion Qubit Using a Trap-Integrated Superconducting Photon Detector,” Phys. Rev. Lett. 126, 010501 (2021). 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、従来の光回路一体型イオントラップでは、イオントラップのためのポテンシャルを形成するため、基板電極には少なくとも10Vのオーダーの振動電圧が常時印加されていることにより、以下の2つの問題が生じる。第1に、振動電圧により生じた電場がトラップチップ全体に満ちていることから、光回路の光学素子にノイズが乗り、誤作動を引き起こすおそれがある。第2に、振動電圧のパワー(1W~10Wのオーダー)のほぼ全てがトラップチップで消費されることから、チップ全体に温度上昇をもたらし、光学素子の性能が劣化するおそれがある。特に、非特許文献2に開示された超伝導体からなるSNSPDは、チップ全体の温度が上昇すると動作することができない。 【0007】 本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電気環境と熱環境を改善する光回路一体型イオントラップを実現させることを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明に係るイオントラップ装置は、複数の電極を有し、複数の電極に交流電圧及び直流電圧を印加することによって原子イオンを空間的に捕獲するトラップチップと、原子イオンに電磁波を照射する照射部を有する光回路チップと、を備える。トラップチップと光回路チップとは、トラップチップと光回路チップとの間が中空になるようにフリップチップ集積されており、トラップチップは、当該中空に原子イオンを浮遊させる。 【0009】 本発明に係るイオントラップシステムは、上述のイオントラップ装置と、原子イオンの量子状態を検出するための光検出装置と、を備える。 【発明の効果】 【0010】 本発明によれば、トラップチップと光回路チップとが、トラップチップと光回路チップとの間が中空になるようにフリップチップ集積されていることにより、イオントラップによる電場及び熱の影響を回避することができる。 【図面の簡単な説明】 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPat(特許庁公式サイト)で参照する