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公開番号2025131384
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-09-09
出願番号2024029098
出願日2024-02-28
発明の名称稠密シートの製造方法、及び稠密シート
出願人AGC株式会社
代理人個人,個人
主分類C09D 127/18 20060101AFI20250902BHJP(染料;ペイント;つや出し剤;天然樹脂;接着剤;他に分類されない組成物;他に分類されない材料の応用)
要約【課題】テトラフルオロエチレン系ポリマー及び無機フィラーの物性を高度に発現して熱伝導性、耐熱性、電気絶縁性に優れ、絶縁放熱基板を構成する部材や放熱絶縁シート等として有用な、寸法変化率が小さく厚い稠密シート層を形成できる製造方法を提供すること。
【解決手段】熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、無機フィラーと、熱分解性基を有するポリマーとを含む液状組成物を、減圧雰囲気下で脱泡処理して基材の表面に配置し、酸素ガス雰囲気下にて加熱して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーと前記無機フィラーとを含む、厚さ50μm以上の稠密シート層を形成する、稠密シート層の製造方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、無機フィラーと、熱分解性基を有するポリマーとを含む液状組成物を、減圧雰囲気下で脱泡処理して基材の表面に配置し、酸素ガス雰囲気下にて加熱して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーと前記無機フィラーとを含む、厚さ50μm以上の稠密シート層を形成する、稠密シート層の製造方法。
続きを表示(約 790 文字)【請求項2】
前記酸素ガス雰囲気下における酸素ガス濃度が、1~21体積%である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の平均粒子径が10μm未満である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記液状組成物中の固形分における前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子及び前記無機フィラーの総量が90体積%以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記液状組成物中の前記無機フィラーが、一次粒子又はその凝集体である異方性フィラーと、平均粒子径が前記異方性フィラーの一次粒子の長径に対し0.2以下である球状フィラーとを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記液状組成物中の固形分における前記異方性フィラーの含有量が60体積%以上である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記異方性フィラーの一次粒子の長径が2μm以上10μm以下であり、かつ、前記球状フィラーの平均粒子径が0.05μm以上2μm以下である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記異方性フィラーのモース硬度が3以下であり、かつ、前記球状フィラーのモース硬度が3超である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
前記液状組成物中の前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量に対する前記異方性フィラーの含有量が体積比で2.4超である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項10】
前記熱分解性基を有するポリマーが、水酸基、オキシアルキレン基、及びカルボキシル基からなる群より選択される基の1種以上を有するポリマーである、請求項1に記載の製造方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラフルオロエチレン系ポリマーと無機フィラーとを含む稠密シートの製造方法、及び稠密シートに関する。
続きを表示(約 4,900 文字)【背景技術】
【0002】
コンピューターチップ(CPU)、ビデオグラフィックスアレイ、サーバー、ゲーム機、スマートフォン、LEDボード等の電子部品や、電気自動車及び送電システムのインバーターやコンバーター等で使用されるパワー半導体を含む半導体モジュール等から発生する大量の熱を放散するために、絶縁放熱基板が用いられる。
従来、パワー半導体を実装する絶縁放熱基板を構成する部材として、アルミナ基板や窒化アルミニウム基板などのセラミック絶縁放熱基板が使用されているが、衝撃で割れやすい、薄膜化が難しいという課題があり、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と無機フィラーを配合した絶縁放熱樹脂基板が提案されている。
絶縁放熱基板を構成する部材に要求される電気絶縁性、耐熱性、熱伝導性、機械的特性を、テトラフルオロエチレン系ポリマー及び無機フィラーを配合した組成物により達成することが考えられる。この場合、組成物を構成する成分の親和性や均一分散性を考慮する必要がある。
特許文献1には、溶融成型可能なフッ素樹脂粒子とシリカフィラーを所定定量比で含有する水性塗料組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
国際公開第2022/097679号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される組成物より形成される被覆層(塗膜)はフッ素樹脂粒子の粉落ちが抑制され、ムラや着色がないとされるが、絶縁放熱基板を構成する部材に要求される電気絶縁性、耐熱性、熱伝導性、機械的特性を達成するには、さらに検討の余地がある。
本発明者らは、熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と無機フィラーと特定種のポリマーを含む液状組成物を脱泡処理して基材の表面に配置し、特定雰囲気下で熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融焼成を行うと、寸法変化率が小さく、ち密な厚いシート(稠密シート)を形成できること、かかる稠密シートは機械的特性、耐熱性に優れ、線膨張係数、誘電率及び誘電正接が低く、絶縁破壊電圧、絶縁破壊強さ及び部分放電電圧が高く、特に電気絶縁性を維持しつつ熱伝導性に優れることを見出し、本発明に至った。
本発明の目的は、テトラフルオロエチレン系ポリマー及び無機フィラーの物性を高度に発現して熱伝導性、耐熱性、電気絶縁性に優れ、絶縁放熱基板を構成する部材や放熱絶縁シート等として有用な、寸法変化率が小さく厚い稠密シート層を形成できる製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、かかる稠密シートの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] 熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、無機フィラーと、熱分解性基を有するポリマーとを含む液状組成物を、減圧雰囲気下で脱泡処理して基材の表面に配置し、酸素ガス雰囲気下にて加熱して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーと前記無機フィラーとを含む、厚さ50μm以上の稠密シート層を形成する、稠密シート層の製造方法。
[2]前記酸素ガス雰囲気下における酸素ガス濃度が、1~21体積%である、[1]の製造方法。
[3] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の平均粒子径が10μm未満である、[1]又は[2]の製造方法。
[4] 前記液状組成物中の固形分における前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子及び前記無機フィラーの総量が90体積%以上である、[1]~[3]のいずれかの製造方法。
[5] 前記液状組成物中の前記無機フィラーが、一次粒子又はその凝集体である異方性フィラーと、平均粒子径が前記異方性フィラーの一次粒子の長径に対し0.2以下である球状フィラーとを含む、[1]~[4]のいずれかの製造方法。
[6] 前記液状組成物中の固形分における前記異方性フィラーの含有量が60体積%以上である、[5]の製造方法。
[7] 前記異方性フィラーの一次粒子の長径が2μm以上10μm以下であり、かつ、前記球状フィラーの平均粒子径が0.05μm以上2μm以下である、[5]又は[6]の製造方法。
[8] 前記異方性フィラーのモース硬度が3以下であり、かつ、前記球状フィラーのモース硬度が3超である、[5]~[7]のいずれかの製造方法。
[9] 前記液状組成物中の前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量に対する前記異方性フィラーの含有量が体積比で2.4超である、[5]~[8]のいずれかの製造方法。
[10] 前記熱分解性基を有するポリマーが、水酸基、オキシアルキレン基、及びカルボキシル基からなる群より選択される基の1種以上を有するポリマーである、[1]~[9]のいずれかの製造方法。
[11] 熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーと、一次粒子又はその凝集体である異方性フィラーと、平均粒子径が前記異方性フィラーの一次粒子の長径に対し0.2以下である球状フィラーとを含み、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの含有量に対する前記異方性フィラーの含有量が体積比で2.4超であり、寸法変化率が1%未満である、厚さ50~1000μmの稠密シート。
[12] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマー、前記異方性フィラー及び前記球状フィラーの総量が90体積%以上である、[11]の稠密シート。
[13] 前記異方性フィラーの含有量が60体積%以上である、[11]又は[12]の稠密シート。
[14] 前記異方性フィラーの一次粒子の長径が2μm以上10μm以下であり、かつ、前記球状フィラーの平均粒子径が0.05μm以上2μm以下である、[11]~[13]のいずれかの稠密シート。
[15] 前記異方性フィラーのモース硬度が3以下であり、かつ、前記球状フィラーのモース硬度が3超である、[11]~[14]のいずれかの稠密シート。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、テトラフルオロエチレン系ポリマー及び無機フィラーの物性を高度に発現して熱伝導性、耐熱性、電気絶縁性に優れ、寸法変化率が小さく厚い稠密シート層を形成できる製造方法が提供される。かかる稠密シート層は、絶縁放熱基板を構成する部材として放熱絶縁シート等に好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の用語は、以下の意味を有する。
「体積」は、対象物の質量をその比重で除して算出される値である。
「平均粒子径(D50)」は、レーザー回折・散乱法によって求められる、粒子の体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
粒子のD50は、粒子を水中に分散させ、レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-920測定器)を用いたレーザー回折・散乱法により分析して求められる。
粒子の比表面積は、ガス吸着(定容法)BET多点法で粒子を測定し算出される値であり、NOVA4200e(Quantachrome Instruments社製)を使用して求められる。
「溶融温度」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定したポリマーの融解ピークの最大値に対応する温度である。
「ガラス転移点(Tg)」は、動的粘弾性測定(DMA)法でポリマーを分析して測定される値である。
「粘度」は、E型粘度計を用いて、25℃でずり速度が10/秒の条件下で組成物を測定して求められる。測定を3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「チキソ比」とは、組成物の、ずり速度が10/秒の条件で測定される粘度η

を、ずり速度100/秒の条件で測定される粘度η

で除して算出される値である。
ポリマーにおける「単位」とは、モノマーの重合により形成された前記モノマーに基づく原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。以下、モノマーaに基づく単位を、単に「モノマーa単位」とも記す。
【0008】
本発明の製造方法(以下、「本法」とも記す。)は、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「Fポリマー」とも記す。)の粒子(以下、「F粒子」とも記す。)と、無機フィラーと、熱分解性基を有するポリマーとを含む液状組成物(以下、「本組成物」とも記す。)を、減圧雰囲気下で脱泡処理して基材の表面に配置し、酸素ガス雰囲気下にて加熱して、前記Fポリマーと前記無機フィラーとを含む、厚さ50μm以上の稠密シート層を形成する、稠密シート層の製造方法である。
本発明はまた、Fポリマーと、一次粒子又はその凝集体である異方性フィラーと、平均粒子径が前記異方性フィラーの一次粒子の長径に対し0.2以下である球状フィラーとを含み、Fポリマーの含有量に対する前記異方性フィラーの含有量が体積比で2.4超であり、寸法変化率が1%未満である、厚さ50~1000μmの稠密シート(以下、「本稠密シート」とも記す。)である。
なお、本明細書において、「脱泡処理」は、脱泡処理及び脱気処理の両方の概念を含む語として用いる。
【0009】
本法によれば、Fポリマー及び無機フィラーの物性を高度に発現して熱伝導性、耐熱性、電気絶縁性に優れ、絶縁破壊電圧、絶縁破壊強さ及び部分放電電圧が高く、寸法変化率が小さく厚い稠密シート層を形成できる。また、本稠密シートは好適には本法により製造できる。
その理由は必ずしも明確ではないが、以下の様に考えられる。
【0010】
Fポリマーは表面張力が低く、他の材料との親和性が低い。そのため、Fポリマーと無機フィラーとを含む組成物から形成される成形物においては、成分間の相互作用が不充分となり、各成分の物性が充分に発現し難い。
本法では、F粒子を含有する本組成物からなる塗工層を基材の表面に形成するに際し、予め本組成物を減圧雰囲気下で脱泡処理する。かかる脱泡処理により、本組成物に取り込まれている気泡(気体成分)が除去され、各成分間の相互作用を高めるため、本組成物又は本組成物から形成される塗工層における、成分分布の均一性が向上していると推測される。そして、塗工層を酸素ガス雰囲気下にて加熱してF粒子を溶融焼成すると、熱分解性基を有するポリマーの分解により生じる微小空間に、溶融したFポリマーが浸透しながら焼成して、均一かつ稠密なシート層の形成が促されると推定される。その結果、Fポリマーと無機フィラー間の残存応力が緩和されるため、機械的特性、耐熱性に優れ、線膨張係数、誘電率及び誘電正接が低く、絶縁破壊電圧、絶縁破壊強さ及び部分放電電圧が高く、特に電気絶縁性に優れつつ、熱伝導性に優れ、寸法変化率が小さく、厚い稠密シート層が得られたと考えられる。
かかる傾向は、本組成物を構成する固形分におけるF粒子及び無機フィラーの総量が90体積%以上であること、また、無機フィラーが、上記した特定の異方性フィラー及び球状フィラーより構成され、本組成物の固形分における前記特定の異方性フィラーの含有量が60体積%以上であると、フィラー同士の接触による熱伝導パスを形成しやすくなるため、より顕著になる。
(【0011】以降は省略されています)

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