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公開番号2025125412
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-08-27
出願番号2024021455
出願日2024-02-15
発明の名称検出対象物質の状態検出センサならびにこれを使用する測定装置およびセンシングデバイス
出願人国立大学法人豊橋技術科学大学,学校法人 東洋大学,国立研究開発法人産業技術総合研究所
代理人個人,個人
主分類G01N 5/02 20060101AFI20250820BHJP(測定;試験)
要約【課題】タンパク質などの夾雑物が存在する環境下において、当該夾雑物が非特異吸着する場合であっても検出対象物質の特異吸着と夾雑物の非特異吸着との状態を切り分けることができる検出対象物質の状態検出センサ等を提供する。
【解決手段】基板1にグラフェン2の架橋構造による可動膜20を形成し、可動膜の振動状態を検出する振動状態検出手段を備える。可動膜が形成される範囲のグラフェンの表面には、特定分子に対する吸着能を有する吸着物質が担持され、検出対象物質との結合能を有する特定分子が前記吸着物質に吸着されており、グラフェンは、可動膜が形成される範囲に通電させるための電源に接続され、グラフェンに対する周期的な通電に伴うジュール熱の発生・停止によって、グラフェンに対する加熱・冷却を交互に繰り返させて可動膜を振動させつつ、可動膜の共振周波数および共振動作時の振動振幅を計測するものである。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
基板上にキャビティを形成するとともに、該キャビティの開口部をグラフェンによって閉口させて該グラフェンの架橋構造による可動膜を形成し、該可動膜を振動させるときの状態の変化により該可動膜に付着した物質の状態を検出するセンサにおいて、
前記可動膜の振動状態を検出する振動状態検出手段を備え、
少なくとも前記可動膜が形成される範囲の前記グラフェンの表面には、特定分子に対する吸着能を有する吸着物質が担持され、検出対象物質との結合能を有する特定分子が前記吸着物質に吸着されており、
前記グラフェンは、前記可動膜が形成される範囲に通電させるための電源に接続され、
前記グラフェンに対する周期的な通電に伴うジュール熱の発生・停止によって、該グラフェンに対する加熱・冷却を交互に繰り返させて前記可動膜を振動させつつ、前記振動状態検出手段により、該可動膜の共振周波数および共振動作時の振動振幅を計測するものであることを特徴とする検出対象物質の状態検出センサ。
続きを表示(約 2,300 文字)【請求項2】
前記振動状態検出手段は、前記グラフェンに対する通電時に該グラフェンのインピーダンスを測定するインピーダンス測定手段であり、
インピーダンス測定手段により測定されるインピーダンスによって、前記可動膜が振動するときに共振周波数および共振動作時の振動振幅に換算するものである請求項1に記載の検出対象物質の状態検出センサ。
【請求項3】
前記グラフェンの表面もしくは前記吸着物質の表面のいずれか一方または両者の双方に、検出対象の検出対象物質以外の物質の吸着を阻害するブロッキング剤を吸着させている請求項2に記載の検出対象物質の状態検出センサ。
【請求項4】
前記特定分子は、SARS-CoV-2のスパイクタンパクを特異吸着する核酸分子であり、検出対象物質がSARS-CoV-2である請求項3に記載の検出対象物質の状態検出センサ。
【請求項5】
請求項2に記載の検出対象物質の状態検出センサを使用し、検出対象物質の質量を計測する検出対象物質の質量測定装置であって、
前記検出対象物質の状態検出センサと、前記可動膜に対して周期的に定電圧電源による電流または定電流電源による電圧の印加および停止を繰り返す電源装置と、前記可動膜の振動振幅を検出する振幅検出手段と、検出された振幅に基づき共振周波数を判定する判定手段と、前記グラフェンのインピーダンスを検出するインピーダンス検出手段と、前記グラフェンのインピーダンスの検出値および前記可動膜の共振周波数の変動から検出対象物質の質量を算出する処理手段とを備え、
前記処理手段は、測定対象環境に前記センサを設置した前後における前記可動膜の共振周波数の変動割合に基づいて該可動膜に付着した物質の全体質量を算出するとともに、測定対象環境に前記センサを設置した前後における前記グラフェンのインピーダンスの変化または前記可動膜の共振動作時の振動振幅の変化に基づいて、前記可動膜に付着した物質の全体数量を算定し、前記可動膜に付着した物質の全体質量と全体数量との相関に基づき、検出対象物質のみによる共振周波数の変動量を導出することにより、検出対象物質のみによる共振周波数の変動量から検出対象物質の総質量を算定するものであることを特徴とする検出対象物質の質量測定装置。
【請求項6】
請求項2に記載の検出対象物質の状態検出センサを使用し、検出対象物質の数量を計測する検出対象物質の数量測定装置であって、
前記検出対象物質の状態検出センサと、前記可動膜に対して周期的に定電圧電源による電流または定電流電源による電圧の印加および停止を繰り返す電源装置と、前記可動膜の振動振幅を検出する振幅検出手段と、検出された振幅に基づき共振周波数を判定する判定手段と、前記グラフェンのインピーダンスを検出するインピーダンス検出手段と、前記グラフェンのインピーダンスの検出値および前記可動膜の共振周波数の変動から前記可動膜に付着した物質の数量を算出する処理手段とを備え、
前記処理手段は、測定対象環境に前記センサを設置した前後における前記可動膜の共振周波数の変動割合に基づいて該可動膜に付着した物質の全体質量を算出するとともに、測定対象環境に前記センサを設置した前後における前記グラフェンのインピーダンスの変化または前記可動膜の共振動作時の振動振幅の変化に基づいて、前記可動膜に付着した物質の全体数量を算定し、前記可動膜に付着した物質の全体質量と全体数量との相関に基づき、検出対象物質のみによる前記グラフェンのインピーダンスの変化量または前記可動膜の共振動作時の振動振幅の変化量を導出することにより、検出対象物質のみによる前記グラフェンのインピーダンスの変動量または前記可動膜の共振動作時の振動振幅の変化量から検出対象物質の数量を算定するものであることを特徴とする検出対象物質の数量測定装置。
【請求項7】
請求項2に記載の検出対象物質の状態検出センサを使用し、検出対象物質の数量および質量を計測するマルチモーダルセンシングデバイスであって、
前記検出対象物質の状態検出センサと、前記可動膜に対して周期的に定電圧電源による電流または定電流電源による電圧の印加および停止を繰り返す電源装置と、前記可動膜の振動振幅を検出する振幅検出手段と、検出された振幅に基づき共振周波数を判定する判定手段と、前記グラフェンのインピーダンスを検出するインピーダンス検出手段と、前記グラフェンのインピーダンスの検出値および前記可動膜の共振周波数の変動から前記可動膜に付着した物質の数量および質量を算出する処理手段とを備え、
前記処理手段は、測定対象環境に前記センサを設置した前後における前記可動膜の共振周波数の変動割合に基づいて該可動膜に付着した物質の全体質量を算出するとともに、測定対象環境に前記センサを設置した前後における前記グラフェンのインピーダンスの変化に基づいて、前記可動膜に付着した物質の全体数量を算定し、前記可動膜に付着した物質の全体質量と全体数量との相関に基づき、検出対象物質のみによる共振周波数の変動量および検出対象物質のみによる前記グラフェンのインピーダンスの変化量または前記可動膜の共振動作時の振動振幅の変化量を導出することにより、検出対象物質のみによる共振周波数の変動量から検出対象物質の全体質量を算定し、検出対象物質のみによる前記グラフェンのインピーダンスの変動量または前記可動膜の共振動作時の振動振幅の変化量から検出対象物質の数量を算定するものであることを特徴とするマルチモーダルセンシングデバイス。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルスなどの対象物質について、その質量や数量などの状態を検出するためのセンサと、このセンサを利用する測定装置およびセンシングデバイスに関するものである。
続きを表示(約 4,500 文字)【背景技術】
【0002】
2020年初頭頃より流行し始めた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界的な大流行(パンデミック)を引き起こし、医療崩壊の危機や経済活動の停滞などによる危機的な状況を招来させた。2023年には、ポストコロナ社会を見据えて、経済活動の復活させる施策が展開されている。このような状況において、経済活動を推進させるためには、環境中のウイルス(新型コロナウイルスのみならず他のウイルスについても同様)について継続的に監視し得るセンサシステムやスループットの高い診断・検査技術の開発が求められている。現時点において、ウイルスの検出に用いられているPCR法は、ウイルスのエンベロープ中のRNAを取り出し、増幅させる工程が必須であるため、簡易かつ短時間におけるウイルスの検出が困難であるという問題点があった。他方において、簡易検査法として抗原検査法または抗体検査法が使用されているところ、抗原検査法も、検出の対象はエンベロープ中の抗原であり、抗体検査法は感染後の血液中で生成される抗体を計測するものであって、いずれも感染の有無を検査するための手法であった。そのため、感染前に環境中に存在するウイルスの状態を直接測定するものではなかった。
【0003】
そこで、ウイルスそのものを検出する小型センサとして、FET技術を応用したISFETによるバイオセンサが研究されている。例えば、非常に高い電子移動度を示すグラフェンを使用するものとして、グラフェンの表面に接触したタンパク質やウイルスなどの電荷に応答して変化する導電性に着目して、電気的に標的を検出するFET型バイオセンサが研究されている(特許文献1~3および非特許文献1参照)。また、SARS-CoV-2のスパイクタンパクを特異的に吸着する抗体をグラフェンチャンネル上に固定化してウイルスを検出したことが報告されている(非特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、電気的なバイオセンシングでは、測定範囲を制限するデバイ遮蔽の問題があり、生理的な塩濃度下では10nmを超える生体分子の検出が困難であるという問題点があった。また、FET型バイオセンサは溶液中で検出対象を検出する計測原理であることから、空気中に存在するウイルスを検出する環境計測への応用は困難であるという問題点があった。これに対し、空気中で動作可能なバイオセンサ技術として、表面プラズモンを利用したSPRセンサ(非特許文献3参照)または吸着分子の質量を計測するQCMセンサ(非特許文献4参照)が開発されているが、これらのセンサは、いずれも感度が不十分なことから、空気中で拡散した微量のウイルスを検出することが困難であるという問題点が残存するものとなっていた。
【0005】
そこで、本願の発明者の一部を含む研究者らにおいて、グラフェン上にレセプターを化学的に修飾し、高感度に選択的分子検出を行うMEMSセンサを実現させるべく、架橋グラフェン下部のキャビティを封止した構造の作製技術が提案され(非特許文献5参照)、抗原抗体反応を利用した選択的分子検出に関する報告(非特許文献6参照)がなされてきた。これらの技術によれば、基板から自立させた架橋グラフェンが基板の光学フォノンによる電子散乱を受けないため、基板に固定されたグラフェンよりも高いキャリア移動度(200,000cm

/Vs)を示すこと、および薄く軽量の架橋グラフェンを用いることで超高感度な質量センサとなり得ることが期待できるものであった。
【0006】
上記に示した構造体によれば、化学修飾に必要な溶液処理に対してロバスト性を有することから、基板に固定されたグラフェンと同様のプロトコールにより化学処理を行うことができるものでああった。また、抗体によって化学的に機能化した架橋グラフェン上に、抗原を吸着した際に発生する膜の静的な変形を検出する表面応力測定を実現することができるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特開2016-047777号公報
国際公開WO2020/170799号公報
特開2021-076529号公報
特開2023-107255号公報
【非特許文献】
【0008】
Y.Ohno, K.Maehashi, K.Matsumoto, “Label-free biosensors based on aptamer-modified graphene field-effect transistors”, J.AM.Chem.Soc. 132, pp.18012-18013 (2010)
G.Seo, G.Lee, M.Jeong, S.-H.Beak, M.Choi, K.B.Ku, C.-S.Lee, S.Jun, D.Park, H.G.Kim, S.-J.Kim, J.Lee, B.T.Kim, E.C.Park, S.I.Kim, “Rapid detection of COVID-19 causative virus(SARS-CoV-2) in human nasopharyngeal swab specimens using field-effect transistor-based biosensor”, ACS Nano 14, pp.5135-5142 (2020)
G.Alison, A.K.Sana, Y.Ogawa, H.Kato, K.Ueno, H.Misawa, K.hayashi, and H.Suzuki, “A Fabry-Perot cavity coupled surface plasmon photodiode for electrical biomolecular sensing,” Narure communications 12, 6483(2021)
A.Afzal, A.Mujahid, R.Schirhagl, S.Z.Bajwa, U.Latif, and S.Feroz, “Gravimetric viral diagnostics: QCM based biosensors for early detection of viruses,” Chemosensors 5(1), 7(2017)
K.Takahashi, H.Ishida and K.Sawada, “Vacuum-sealed microcavity formed from suspended graphene by using a low-pressure dry-transfer technique,” Appl.Phys.Lett. 112, 041901(2018)
S.Kidane, H.Ishida, K.Sawada, and K.Takahashi, “A suspended graphene-based optical interferometric surface stress sensor for selective biomolecular detection,” Nanoscale Adv. 2, pp.1431-1436(2020)
喜種 慎、澤田 和明、高橋 一浩、「架橋グラフェンを用いた超高感度光干渉型マルチモーダルバイオセンサ」、第12回集積化MEMSシンポジウム、2020年10月26~28日、オンライン、28A3-AP-1
K.Arano, A.A.B.Kusaini, E.Furusawa, J.Uesaka, Y.-J.Choi, T.Noda, T.Goda, Y.Miyahara, K.Sawada, K.Takahashi, “A suspended graphene-based resonant mass sensor for label-free virus detection”, 2021 Int. Conf. on Solid State Devices and Materials, On-line, G-6-01
新野 謙、クサイニ アミルン、上坂 純平、古澤 絵里子、崔 容俊、合田 達郎、宮原 裕司、野田 俊彦、澤田 和明、高橋 一浩、「グラフェン共振センサによる飛沫中のインフルエンザウイルス検出」第82回応用物理学会秋季学術講演会、2021年9月10日~13日、オンライン、13p-N322-8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前掲の非特許文献6に開示される技術は、表面応力測定によるものであるが、この表面応力測定では、抗原分子の電荷に依存して変化する膜の変形量を計測するため、濃度の変化は測定できるものの、実際に吸着されている分子の数量を定量することができなかった。そこで、本願の発明者の一部を含む研究者らは、さらに、架橋グラフェンを振動させるとき、架橋グラフェン上の吸着物質の質量に応じて共振周波数が変化することを見出し、その共振周波数シフトを検出する共振質量測定を開発した(特許文献4参照)。そして、この共振質量測定を利用して、抗原抗体反応によって吸着する抗原の質量計測の可能性(非特許文献7)およびヒトインフルエンザウイルスの吸着量に対する質量計測の可能性(非特許文献8および9)を実証した。これらの実証実験では、レセプターとして抗体やシアロ糖鎖を用いており、タンパク質またはヒトインフルエンザウイルスを架橋グラフェン上に特異吸着させることも同時に実証したものであった。また、レセプターをCOVID-19の原因ウイルスを特異的に吸着するDNAアプタマーに変更することにより、不活化処理後の共振質量測定をも可能にするものであった。
【0010】
しかしながら、検出対象物質の状態を測定しようとする場合、測定対象空間としての屋内空間には、タンパク質をはじめとする夾雑物が空間内に浮遊しており、特に、多人数が同時に利用する会議室、店舗などの屋内空間においては、唾液中の多量のタンパク質がエアロゾル化して浮遊し、センサのセンシング領域に非特異的に吸着することがあった。この種の夾雑物の非特異的吸着を回避するために、一般的には、ポリエチレングリコールなどの非特異吸着抑制分子(ブロッキング剤)を用いることにより、センシング領域に特異界面を形成させる方法が採用されているが、実際の室内環境中には唾液を原因とする多量のタンパク質などの夾雑物が高濃度に存在するため、これらの非特異吸着を完全に回避させることは困難であった。
(【0011】以降は省略されています)

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