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公開番号2025079310
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-05-21
出願番号2024153477
出願日2024-09-05
発明の名称不飽和有機物の同定方法および質量分析システム
出願人株式会社島津製作所
代理人弁理士法人京都国際特許事務所
主分類G01N 27/62 20210101AFI20250514BHJP(測定;試験)
要約【課題】特に、不飽和有機物における炭素-炭素二重結合の位置の特定に適用できる、不飽和有機物の同定方法及び質量分析システムを提供する。
【解決手段】aza-Prilezhaev反応により、不飽和有機物における炭素-炭素二重結合をアジリジン化し、誘導体化生成物を得る誘導体化反応ステップを含み、そして、誘導体化生成物を特異的に解離した後、質量分析を行う同定方法。該同定方法は、従来の方法と比較して、温和な反応条件、適切な誘導体化度合い、副反応の低減、高い転化率などの利点のうちの少なくとも一つを有する。
【選択図】図6
特許請求の範囲【請求項1】
不飽和有機物の同定方法であって、
aza-Prilezhaev反応により、不飽和有機物における炭素-炭素二重結合をアジリジン化し、誘導体化物を得る誘導体化反応ステップと、
イオン化された前記誘導体化生成物を解離することにより、本来前記炭素-炭素二重結合を対応的に有するサイトで切断され、複数のサブイオンを得る解離ステップと、
複数の前記サブイオンの質量数を測定して、前記不飽和有機物における炭素-炭素二重結合の位置を特定する質量分析ステップと、を含み、
前記aza-Prilezhaev反応に用いられる誘導体化試薬は、下記一般式(1)で表される化合物を含み、
TIFF
2025079310000009.tif
37
137
前記一般式(1)において、


は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~18の芳香族基から選択され、


は、H、置換若しくは無置換の1~20のC原子を有する直鎖のアルキル基、アルコキシ基又はチオアルキル基、置換若しくは無置換の3~20のC原子を有する分岐若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基又はチオアルキル基、置換若しくは無置換の2~20のC原子を有するアルケニル基又はアルキニル基、又は置換若しくは無置換の5~30の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系から選択される、ことを特徴とする不飽和有機物の同定方法。
続きを表示(約 1,400 文字)【請求項2】


の質量数は80Daより大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の不飽和有機物の同定方法。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物は、
TIFF
2025079310000010.tif
38
141
である、ことを特徴とする請求項2に記載の不飽和有機物の同定方法。
【請求項4】
前記誘導体化試薬の溶媒は酸性溶媒である、ことを特徴とする請求項1に記載の不飽和有機物の同定方法。
【請求項5】
前記酸性溶媒は、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、パーフルオロ-t-ブタノールのうちの一つ又は複数種の組み合わせである、ことを特徴とする請求項4に記載の不飽和有機物の同定方法。
【請求項6】
前記aza-Prilezhaev反応の反応温度は20-100℃である、ことを特徴とする請求項1に記載の不飽和有機物の同定方法。
【請求項7】
前記不飽和有機物は不飽和脂質である、ことを特徴とする請求項1に記載の不飽和有機物の同定方法。
【請求項8】
前記不飽和脂質は、脂肪アシル、グリセリド、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、ステロールエステル、プレグネノロン脂質、糖脂質又はポリケチドである、ことを特徴とする請求項7に記載の不飽和有機物の同定方法。
【請求項9】
質量分析システムであって、
サンプルとaza-Prilezhaev誘導体化試薬とを混合して反応させることにより、aza-Prilezhaev反応を用いて、サンプルにおける不飽和有機物の炭素-炭素二重結合をアジリジン化して誘導体化生成物を得る誘導体化反応器と、
前記誘導体化生成物を受け取ってからイオン化するイオン源と、
前記イオン源でイオン化された前記誘導体化生成物を解離することにより、本来前記炭素-炭素二重結合を対応的に有するサイトで切断され、複数のサブイオンを得る解離装置と、
複数の前記サブイオンの質量数を測定して、前記不飽和有機物における炭素-炭素二重結合の位置を特定する質量分析計と、を含み
前記誘導体化試薬は、下記一般式(1)で表される化合物を含み、
TIFF
2025079310000011.tif
36
132
前記一般式(1)において、


は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~18の芳香族基から選択され、


は、H、置換若しくは無置換の1~20のC原子を有する直鎖のアルキル基、アルコキシ基又はチオアルキル基、置換若しくは無置換の3~20のC原子を有する分岐若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基又はチオアルキル基、置換若しくは無置換の2~20のC原子を有するアルケニル基又はアルキニル基、又は置換若しくは無置換の5~30の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系から選択される、ことを特徴とする質量分析システム。
【請求項10】


の質量数は80Daより大きい、ことを特徴とする請求項9に記載の質量分析システム。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析分野に関し、具体的に、不飽和有機物の同定方法及び質量分析システムに関する。
続きを表示(約 2,300 文字)【背景技術】
【0002】
脂質は重要な栄養素であり、生体細胞の重要な構成成分でもあり、一部の重要な免疫機能と代謝欠陥と密接に関連する。現在、脂質代謝経路研究計画(Lipid metabolites and pathways strategy、LIPID MAPS)が既に起動され、分類データベースを確立することで脂質オミックスの研究を推進している。
【0003】
完全な脂質標識と識別情報には、類別、元素構成、R-基の寸法と位置(sn-位置)、二重結合数と位置、及び二重結合のシス-トランス異性配向が含まれる。脂質の異性体の識別、特に不飽和脂質の二重結合位置の同定のために、様々な質量分析新法が次から次へと開発されている。現在、主流の方法として、三種類に分類できる。第一種は、例えば液体クロマトグラフ(非特許文献1)、イオン移動度分光法(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)などの分離技術を利用して、標準品のピーク位置と比較することによって、脂質を同定する。ただし、このような方法は、大量の標準品を必要とするが、脂質分析にとって、未知サンプルが多く存在するため、適用範囲が限られている。第二種は、気相イオン励起方法に基づいて、未知の脂質における炭素-炭素二重結合の選択的な破砕を実現できるものであり、高エネルギー衝突誘起解離(非特許文献6)、遠隔電荷解砕(非特許文献7)、紫外光解離(非特許文献8;非特許文献9)、オゾン誘起解離(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13)、有機物イオン電子衝撃励起(非特許文献14;非特許文献15)、酸素吸着解離(非特許文献16)及びラジカル誘起解離(非特許文献17)等が含まれる。
【0004】
しかし、ほとんどの気相イオン励起による解離方式では、不飽和脂質が過度に砕けてしまい、複雑度の高いスペクトログラムが生成され、二重結合位置の関連診断イオンの存在量が低く、感度が低い。複雑なサンプルの分析には、通常、比較的複雑な前処理や分離方式が必要である。精密な質量分析計を使用することと、感度が限られていることから、このような方法は、まだ大規模な脂質分析に適用されていない。
【0005】
複雑な生体サンプルにおける低存在量脂質異性体の同定について、現在、最も一般的に使用されているのは、第三種の化学誘導体化-質量分析法であり、Paterno-Buchi (P-B)反応(非特許文献18;非特許文献19)、エポキシ化反応(非特許文献20;非特許文献21)、一重項酸化反応(非特許文献22)、アジリジン化反応(非特許文献23;非特許文献24;非特許文献25)及びいくつかの他の反応(非特許文献26)が含まれる。
【0006】
Xiaらは、非特許文献27において、親水性相互作用クロマトグラフィ(Hydrophilic Interaction Liquid Chromatography, HILIC)、捕捉イオン移動度スペクトル(Trapped Ion Mobility Spectrometry, TIMS)及び異性体解析タンデム型質量分析(MS/MS)を有機的に統合し、データ自動解析能力を有するリン脂質深層分析システムを開発させ、複数種の生体サンプルにおけるリン脂質の高速度、高敏度、高網羅性の定量分析を実現した。同文献において、オフラインPaterno-Buchi (P-B)誘導体化反応を採用して、リン脂質の炭素-炭素二重結合を標識する。
【0007】
Liのチーム(非特許文献20)とHsuのチーム(非特許文献21)は、それぞれ、エポキシ化反応を利用して不飽和脂質-炭素二重結合の位置を同定する方法を、先後して提案していた。Prilezhaevメカニズムに基づいて、mCPBAと二重結合との相乗反応により、二重結合がオキシクロプロパンに変換され、該三員環構造は後続のCIDにおいて断裂しやすいため、二重結合の位置を指示可能な診断イオンが生成される。
【0008】
しかし、エポキシ化にはイオン化しやすい官能基が導入されていないとともに、反応収率に問題があるため、検出の感度が低く、低含有量の脂質の分析には依然として大きな障害が存在している。複数の二重結合を含む脂質に対して、反応に伴って過剰に酸化された副生成物を複数種形成してしまい、感度が大幅に低下するだけではなく、分析の難易度も大きく増加する。
【0009】
イオン化しやすいサイトの導入では、含窒素複素環プロパン化は好ましい策である。Yanらは、特許文献1に、HOSA試薬、ピリジン、トリフルオロピルビン酸エチルの組み合わせを用いて、炭素-炭素二重結合をアジリジン化し、炭素-炭素二重結合の標識を行う新たな質量標識を開示した。この反応は、電子不足なケトンを触媒として利用し、まず窒素源のHOSAと反応させてキー中間体であるオキアジリジンを生成する。この中間体は、その後、二重結合化合物と反応してアジリジンを生成する。
【0010】
Guoらは、特許文献2において、クロロアミン類誘導体化試薬を二重結合位置の同定に適用する方法を開示している。この特許では、炭素-炭素二重結合を標識する反応試薬として、主にN-クロロ-4-メチル-ベンゼンスルホンアミドナトリウム塩が用いられている。
(【0011】以降は省略されています)

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